「先輩、」 俺が後ろから話しかけると、大好きな先輩は怯えた表情で俺を見た。 何でそんな顔するのかなぁ? 俺、先輩に何か悪いことしたっけ?してないよね? 「こ……こないで、」 先輩は俺を凝視して、一歩ずつ下がる。 俺は首を傾げて、先輩に近寄る。 「先輩?俺、怒ってませんよ?」 未だ表情を強張らせている先輩に、優しく微笑む。 もう、先輩は馬鹿だな。 すぐ後ろは壁なのに。 まだ逃げようとするなんて。 「怒ってないから……」 優しく先輩の髪に触れる。 優しく先輩の頬を撫でる。 優しく、両手で。 優しく先輩の首を撫でる。 優しく……俺は先輩の首を絞める。 「うぐっ……ぐぎ、ぁ゙……っ」 痛々しく先輩は顔を歪める。 痛々しく先輩は声をしぼる。 痛々しく先輩は抵抗をする。 虚しくその抵抗する手も落ちた。 「…………先輩が悪いんだよ」 俺は、切々と呟く。 「赤也、ごめんね……。もう、私限界なの」 「別れて」 あんなこと言うから。 俺を手離すから。 俺を捨てようとするから。 こんなにも愛しているのに。 愛しているのに。 愛しているのに。 誰よりも、 誰よりも、 愛しているのに………。 「俺は、悪くない………」 先輩がいけないんだ。 俺の事、嫌いだっていうから。 先輩がいけないんだ先輩が先輩が。 もう一度俺を好きだって言ってよ。 |