▼ ××的恋愛しましょ!


勇気を出し、松下に声をかけてから一週間、今まで関わり無かった事が嘘の様に打ち解けていた。



「内山のタイプはどんな子?」

「お、俺は優しい子がタイプ!!」

「……高橋には聞いてない。で、内山のタイプは?」

「うーん……普通な子、かな。」

「普通?……平凡って事か?」

「ま、そうなるな。」



そう、打ち解けていた……俺よりも慎也の方が。



確かにあの時、仲良くなりたいと言ったのは俺で、松下も快諾してくれたはず。
なのに何故だろう…………
松下と仲良くなったのは慎也で、松下もそれを望んでいたように感じる。



俺、邪険にされてないか?



話しかけても適当にあしらわれ、松下の興味は常に慎也へ向けられている。
特に、恋愛ネタは食い付きが良い。



それじゃまるで、松下が慎也を……



「望みはある、って事か。」



――――!?



松下の呟きに、心臓が跳ねる。
ドキドキと鼓動が早くなって、自分が何故、こんなにも動揺するのか分からない。
ただ……確かめてみたいと思った。



――――――――――



「松下は……慎也の事が、好き?」



もう直ぐ授業が始まるからと、席に戻った松下の後を追う。
小声で尋ねれば、僅かに目を見開いた。



「………………好きだよ?」

「っ…………そ、か。」



驚きながらも、はにかんで『好きだ』と答える松下。
この表情を見れば、言葉を聞かずとも分かる。



松下は……慎也に恋してるんだ。



「おい、高橋。何処行くんだ?もうチャイムが鳴るぞ?」

「…………ちょっと、保健室。頭冷やして来る。」

「頭?…………よく分からないけど、先生には伝えとく。」

「ありがとう。宜しくな。」

「ん。」



ひらひらと松下に手を振ると、教室を後にした。
保健室とは反対……人気の無い階段を目指して。



目的の場所に着くと、中段辺りで腰を降ろす。
辺りは静まり返って、考え事をするには最適だった。



「好き…………か。」



俺は先程の言葉を思い返した。



ここは男子校で、同性愛もある。
松下が男に惚れても不思議じゃない。
そもそも、ノーマルの俺には関係ないはず……なのに、ドキドキと騒がしい心臓、緊張で冷えた指先。



こんなの、俺じゃない。



大丈夫、大丈夫。
俺は松下と仲良くなりたいだけで、その松下が、俺の友人を好きだっつーから動揺してんだ。



大丈夫、大丈夫。
慎也は良い奴だし、松下も優しいから……応援すれば良い。
なんたって俺は、2人の友人で、話すきっかけを作ってやったんだ。
こうなったら最後まで面倒を……



「…………嫌だ。」



そんなの、絶対に嫌だ!!
2人が付き合うなんて、認めない。



……ごめん、松下。
俺はお前を、応援できそうにない。



多分、俺は……俺は……






お前の事が、好きだ。






11.0512
 
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