▼ 不良×平凡


俺は不良に屈しない。
例え、相手がここらで有名な狂人でも、睨まれても、殴られても、絶対に屈したりはしないのだ。



「ああ¨?」

「だから、無理。」

「チッ」



このやり取りを、かれこれ3回は繰り返している。
何を血迷ったか、目の前の不良……久遠 雅彦は、昼休みに俺を屋上へ呼び出し『好きだ、付き合え。』とのたまった。



いやん、怖い、殴られる。
ええい、OKしちゃえ!!!



なんて思うはずもなく、キッパリスッパリ『無理。』とお断りしたはずなのに、こいつはなかなかに……しつこい。
いっその事、一発殴って終わりにしてくれないか?



「……俺の何が悪い。」

「……いや、悪いっつーか無理。もう面倒だし、殴っても良いから諦めてくれません?」

「っお前を、殴る訳ないだろ!!」

「そう、じゃあ教室戻るわ。」



不機嫌丸出しの凶悪面な久遠を残し、俺は屋上を後にした。



久遠 雅彦……彼は恐ろしい伝説をいくつも持っている。
伝説の内容は最強不良の『あるある』ネタばかりだが、見た目の迫力で、そんなテンプレ伝説すら馬鹿にできない。
おまけに、日本人離れした外見と銀髪で奴は何処に居ても目立つ。
そんな人間と、空気のように生きて来た平凡野郎が釣り合う訳がない。
まぁ……狂人と呼ばれようが、所詮は奴も、俺と同じ高校3年……喧嘩じゃ適わないが、意見する事くらいはできる。
とにかく、これで俺の平穏な日々が守られる事を願うばかりだ。



「隆也!!ちょっと来い!!」

「…………は?」



事件が起きたのは、例の告白から3日程経った放課後の事。
家に帰ったらゲームでもするか……と、軽く考えていた所に、顔を真っ青にさせたクラスメートが、俺を何処ぞへと連れ出したのだ。



「おい、いきなりなんだよ。」

「裏庭で暴れてんだよ!!久遠が!!」

「…………それで俺を連れ出す意味が分からない。」

「『何で無視しやがる!!隆也!!』って叫びながら暴れってからだよ!!」

「…………おやまあ。」



この3日間、久遠は頻繁に俺の元へ現れた。
関わるのが面倒だった俺は、ことごとく無視を決め込んでいたのに、耐えきれなくなった久遠が周りに八つ当たりを始めたらしい。
つくづく迷惑な奴。
3日前まで一切関わりなかったと言うのに…………



「…………久遠。」

「っ隆也!!」

「なに暴れてんだよ。……ベンチ持ち上げるとか、何処まで企画外なら気が済む訳?」

「…………お前が、俺を無視しやがるから!!!!」

「だって、あんた目立つんだもん。今だってそう。俺は目立つのが嫌なの。ついでに言うと面倒な事も嫌い。嫌な事尽くめで好きになれるはずがない。分かったら二度と関わらないで下さい。」

「っ!!」



久遠だけじゃなく、周りに居た野次馬達も息を飲んだのが分かった。
流石に怒らせたか?と思ったが、殴らないと言った奴の言葉は本当だったらしい。
俺は言いたい事だけ言うと、スッキリした面持ちで帰路についた。



その後ろで、久遠がある決心をしていたとも知らずに…………



11.0422
 
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