▼ 王道設定 生徒会+α×脇役平凡


つい1週間前、山奥にある全寮制男子校に転校生がやって来た。
その転校生っつーのが、髪の毛はモサモサバサバサ、冗談みたいな瓶底眼鏡で小汚いもんだから俺は毛玉って呼んでいる。
本名は確か……なんとか優?
忘れたけど、まぁ良いか。
んでよ、毛玉は不思議な事に、顔と家柄重視のこの学園トップに君臨する生徒会+αをホイホイしてみせた。
因みに、+αって言うのは、一匹狼として有名な不良の事だ。
まぁ……同性にキャッキャッする奴が多いこの学園で、俺は異性にしか興味が無いし、生徒会+αを毛玉がホイホイしようがどうでも良い……と思っていた矢先、災難は俺に降りかかって来た。
毛玉が何故か引っ付いて離れないのだ。



そう言や俺、蓄電体質だったな……



そうして毛玉に懐かれた俺は、生徒会+αに嫉まれ、更にはそのバックに居る生徒会+αの親衛隊にまで目を付けられる始末。



あれ以来、俺の平凡ライフは終わりを告げたのだった。



――――――――――



俺は今、1人で図書室に居る。
毛玉+生徒会+α+親衛隊と離れられる時間は大変貴重だ。
そんな貴重な時間を満喫していると、生徒会役員である書記が現れた。



「今日は書記……さんだけ?」

「…………………………………………………………………ああ。」

「そっすか。」



ならまぁ……問題は無いか。



書記は無口な事で有名だ。
他の生徒会役員+α、親衛隊がギャーギャーとウルサい中、書記は俺を睨むだけで害はない。
が、今日はやたらと視線が痛い。



「……なんすか?」

「…………………………………………………………………お前、変。」

「……は?」

「…………………………………………………………………俺、話すの苦手。遅いし……………だけど、待ってくれる。」



ああ、そう言う事………。
でも、別に普通だろ?
書記の話しは遅いが耐えられない程じゃ無い。



「…………………………………………………………………優も同じ。……………俺の話し聞いてくれて、笑ってくれる……………初めてだった。……………嬉しかった。……………だから好き。………お前も「なっげぇ!!話しがなげぇよ!!話すの苦手なら話すなよ!!」



遅い、早い、の問題じゃない。
俺は長話しが大嫌いだ。
少しでも長いと感じたらアウト!!
全ては俺の気分次第。



「チッ、帰る!!」



俺は呆然とする書記を残して、図書室を後にした。



――――――――――



「面貸せゴラァ!!」



寮に向かう途中、俺は運悪く不良に絡まれた。



書記の次はαか……。



こいつは喧嘩っ早くて嫌いだ。
そんな喧嘩馬鹿相手に逃げるのは、何時も苦労する。
俺はただの一般生徒だからな。
だが今日は、先程の事もあって機嫌が悪い。



「おい、平凡の癖に無視してんじゃねぇぞ!!ああ゛!!」

「……………黙れ。」

「っ!!んだと、テメェ!!」

「うるっせんだよ!!カルシウム不足が!!常に切れてやがって禿げんぞボケ!!否、禿げてしまえ!!」

「っ!!」



俺は平凡らしからぬ完璧な投球フォームで、ポケットに入っていたミルクキャンディーをαに投げつけ見事に命中!
額をおさえて俯くαを横目に、再び寮へと歩き出した。



――――――――――



「「待ちなよ、平凡!!」」



おいおい、マジかよ…………
書記、αの次は会計の双子だと!?
寮までたいした距離もねぇのに、なんだこの遭遇率は!!!!



「悪いがお前達に構ってる暇はねぇ。」

「「わぁ、生意気!!僕達の見分けもつかないくせに!!……まぁ良いや。今ここで僕達を見分ける事ができたら見逃してあげ「右が兄、左が弟。」

「「ブッブー、ハズレ。フライングしたくせに外すなよ!!……やっぱり平凡には難しかったかな……」」



うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ!!!



「勝手に期待して落ち込むんじゃねぇよ!!」

「「っ!!僕達が平凡に期待する訳ないじゃん!!」」

「だったら暗い顔すんな!うぜぇから!だいたい、どっちがどっちでも興味ねぇし、間違われたくなきゃ目印でも付けてろ!自分から名乗れ!」



会計の片方に『目印』と称して、自分が付けていたタイピンを渡し、今度こそ無事に寮へ帰りたい!と走りだした。



――――――――――



「お待ちなさい。平凡。」

「待ちやがれ、平凡!!」



ふっ……出たな、副会長+生徒会長!!
この流れは予測してたぜ!!



「さっきも会計に言ったが俺は暇じゃない。そこの作り笑いと俺様ナルシストに構ってる時間はねぇ!!」



「っ!!僕の笑顔が作り笑いだと!?」

「誰がどう見ても作り笑いだろうが!!でもな、今のポカーン顔は気持ち悪ぃから、ずっと作り笑っとけ、腹黒!」

「おい、平凡!!誰が俺様ナルシストだと!?」

「お前だよ、お前!!ナルシストのくせに眉毛のバランスおかしいんだよ!!年中鏡見てるのに気付かねぇのか!?出直して来い!!……それと、その後ろに控えてるチワワ共!!!!」

「「「「!?」」」」

「俺に絡んで来たら噛み殺す。」



こうして俺は、無事に寮へ辿り着く事ができた。



――――――――――



寮に帰ってから夕寝をしていた俺は、腹が減って目を覚ました。



「……食堂行くか……。」



食堂に行く準備を整え、部屋のドアを開けると、生徒会+α+親衛隊が廊下で待機していた。



「お前は俺様の美を追求するのに必要不可欠な存在だと気が付いた!今日から俺様のものになれ!」

「僕の作り笑いを見抜いたのは優も同じだったけど……作り笑っとけ……なんて言われたのは初めてだった。君、なかなか面白そうで気に入ったよ。」

「…………………………………………………………………話さなくて良いお前の隣は楽。」

「「僕達自ら目印を付けるのは嫌だったけど、あんな風にアドバイスや目印をくれたのは平凡が初めてだった!!今後は名乗るようにするから僕達と仲良くしてよ!!」」

「俺の頭髪、気にしてくれたのはテメェだけだったからな……なんつーか、嬉しかった。」

「「「「見かけによらず、男らしい獰猛な目が素敵でした!キャッ、言っちゃった!!」」」」

「あーーー!!!お前等、いつの間に仲良くなったんだよ!!!俺もまぜろよな!!!」



毛玉……また厄介な所へ……



平凡は俺のだ僕のだ皆のだ!と騒ぐ連中を無視して、部屋のドアを静かに閉めた。



確かカップ麺があったはず……



こうして俺は、毛玉を上回る早さで美形をホイホイしてしまったのでした。



ちゃんちゃん。



END



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