▼ 高校生×高校生 ※恋人設定


「お前って、どこをどう見ても男だよな」



小さなアクセサリーショップにて、真剣な顔でピアスを選ぶ“恋人”の姿に、しみじみ呟く平日の午後4時半。
隣の男は、ピアスに目を向けたまま、器用に眉を上げて見せた。



「……は? そんなの決まってるじゃん、俺は男なんだから」

「……ですよね」

「……なに? 突然」

「いや、何で俺は男と付き合っているのかと思いまして」

「…………………………」



チラリと俺を見た彼は、何も言わず、すぐにピアス選びを再開した。
が、そんな彼にも構わず、俺は話し続ける。



「だって俺はノーマルだし、百歩譲ってお前が女の子に間違える見た目をしていたら納得もしよう。なのに身長180だっけ?」

「182」

「そう、182もあっちゃあそれもキツイ。髪型はまぁ、栗色でクルふわだし、女の子がしてても可愛いわな。俺、ショートは結構、好きなんだ」

「……ふーん」

「あ、おい、やめろ。お前みたいにデカイ男が毛先をクルクルしても可愛くないキモイ」

「…………………………」



若干、膨れっ面をした彼は、黒とシルバー、2種類のピアスを手に取り、見比べている。
黒には白、シルバーには黒のデカイ石が付いたシンプルなのに派手なピアスだ。
正直、どちらも趣味じゃない、と勝手な事を思いつつ、そこには一切触れなかった。



「そういや俺も、お前みたいにクルふわさせたら、2、3日で元に戻った。髪質的に駄目らしい。金の無駄だった」

「は!? お前いつ、そんなんしたの?!」

「お前がインフルで1週間ひきってる間」

「……マジかよ……ちょっと見たかった」

「けど似合ってなかったし、未練は無い」

「……う〜、そっか」

「あれはお前みたいに、むかつく程イケメンな男がする髪型だ。デカイだけでもダメ。要は顔だよ顔。このイケメンめっ」



俺の言葉に、彼の口もとがニヤリと緩む。
少し嬉しそうなのがウザイ。
先程、手にしたピアスを戻し、今度は赤やら水色やらのピアスを見ている。
それはまさか、誕生石ってやつですか?
ますます俺の趣味じゃない。
だけどもまたまた、思うだけにとどめた。



「だから、お前の隣に居ると、平凡な俺が霞んで見えるっつうか、心が折れそうになるんだよ。男の敵だ、お前はっ! だからさ、何で男と、しかもイケメン爆発しろと付き合っているんだろうか? 俺は」

「…………結局、何が言いたいの?」



今度は“へ”の字に口を結んだ。
緩んだり閉じたり、忙しない口もとだな。
彼の視線はピアスにあるけど、ゆらゆら揺れているのがわかる。



「お前は、何で俺と付き合ってんの?」



彼に訊いてみる。



「好きだからに決まってるじゃん」



彼は迷わず答えた。



「……へぇ、そっか」

「……なんだよ、お前は違うのかよ」



彼の言葉に、少し考える。
ピアスを取ったり、戻したり、彼の動揺する姿が面白い。
そうだな、俺は――



「強いて言えば、俺を好きな所が好き」



生まれてから17年、初めて俺に『好きだ』と言ってくれた人。
すっげぇ女にモテるのに、平凡で、しかも男の俺に惚れている。
お前以外、誰も俺に興味ないよと言っても、いつもどこか不安そう。
むしろお前が他に行くんじゃね?って話し。
なのに、揃いのピアスをつけたがる。
今日だってそのピアスを買いに来た訳だし。
何気に独占欲が強い。
だけど、ペアリングとか言わないだけまし。
それに、穴の無い俺の為にピアッサーと消毒液まで買って来ちゃうとか笑える。
家には氷も用意してあるんだっけ?
そうゆう些細な事に、愛を感じる。
毎日毎日、小さな“好き”が沢山。
それが何だか嬉しくて、



「だから付き合ってるのかも」

「……じゃあ、俺がお前を好きな限り、お前も俺を好きって事?」

「そうなるかな」

「ふは、何だそれ」



眉毛は少し困っているけど、口もとはまた、ふにゃんと緩んでいる。



「なぁ、ピアス決まった?」

「あーまだ悩み中」

「じゃあコレにしようよ」



そう言って俺は、1つのピアスを選んだ。
リング状になった黒のピアスで、一部がネジれたお洒落なデザイン。
が、彼は不満そうに顔をしかめた。



「コレだとイメージに合わない……もう少し甘めというか、可愛い感じの」

「コレでいいよ、お前に似合いそうだし」

「いや、俺よりお前に似合うピアスを……」

「いいんだよ、俺に似合わなくて。今回は、お前に似合えばいいの。だってコレ、お前のだって印につけるんだろ? だったらお前に似合うピアスの方が、所有印っぽいじゃん」

「しょゆっ………………あー、んーじゃあ、コレに…………しよう、かな……折角だし」



彼はバッと目を見開いて、それから男らしい大きな手で口もとを隠した。
絶対に今、ニヤケているんだと思う。
阿呆だな、こいつ。
いそいそとレジに向かう背中を鼻で笑った。



「急いで俺ん家に帰って、あけようぜ!」



頬を赤く染めた彼が嬉しそうに寄って来る。
ああ、この感じ。



強いて言えば好きなとこ



END



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