▼ もやもや解せない話
日曜の少し早い時間、1通のメールが届いた。
送り主はクラスの友人で、内容は『近隣で多発してた露出抂が捕まったらしい!』と言う物。
なぜ俺にそんな知らせが?と思えば、恐らく露出抂に遭遇した事実を話したからだろう。
勿論、簡単に……だが。
「そっか……捕まったのか、あの人。」
『これで安心して公園を通れるな。』どこか実感の湧かぬまま、俺はポツリと呟いた。
*
夕方、俺はコンビニへ飲み物を買いに行きがてら、公園の中へ足を踏み入れる。
ここから数メートル先は、俺が露出抂と遭遇した場所だ。
「……普通に、普通の公園じゃん。」
露出抂が捕まった今、ここは平和な……どこにでもある、ただの公園で、避けて通ったあの頃が遠い昔に感じる。
「しかし馬鹿だよな、あの人も……散々、注意してやったのに、結局」
「おや、君じゃないか!!」
「っ………………え?な、んで?」
突然、背後から聞き覚えある男の声がした。
振り返ればそこに、もう二度と……本気で会う事は無いだろうと……そう思った男の姿。
俺の渡したマフラーに、例のコート……間違いない、¨露出抂¨だ。
「あんた……捕まったんじゃ……」
俺の言葉に、露出抂は眉を寄せ首を傾げた。
一体何の話しだ?と言わんばかりに。
「だって、学校のやつがメールで……捕まった、って。」
「なんだい、その詰まらない嘘は。」
「……嘘?」
「……そんな事より、君に1つ報告がある。僕は露出を止める事にしたんだ。」
「……は?」
色々と思考の追い付かない俺に、露出抂はドヤ顔で宣言してみせた。
「なーんて、嘘。」
と思ったら、次の瞬間には衣服を脱ぎ捨て、見慣れた¨露出抂¨の姿になっていた。
「ふはは、騙されたかい?今日はエイプリルフール!!君の友人より、僕の方がセンスある嘘をつけただろう?」
「エ、イプリルフール……そうか。嘘だったのか、捕まった事も、全部。よか……」
『良かった。』そう口に出そうとして驚いた。
なんだよ……¨良かった¨って。
もやもやと、遂には自分の考えまでわからない事態に陥った……かもしれない。
「ふんっ、本当に捕まれば良いんですよ。」
どうやら俺は、この変態と同じ空気を吸いすぎたらしい。
嬉々として裸を晒す男へ言い放つと、これ以上毒されぬよう、全力で走り出した。
END
12.0402
・(1日遅れの)エイプリルフール
解せない話CP