俺はこの春、両親の海外出張を理由に、山奥の山奥にある全寮制の男子学園へ編入して来た。
小中高一貫の金持ち学園で、更にはホモとバイがごろごろ居るらしい。
なんでも、小中高と周りは男しか居ない環境が、そっちの道へ走らせたとか。
因みに、ただの一般家庭で育った俺が、何故この学園に入れたかは謎。
成績が特別良い訳でも無い、他より優れた特技も無い……ただの平凡。
それに俺は、今年で高3。
そんな時期の編入は、正直、憂鬱でならなかったけど、ここへ来る以外、日本へ残る選択肢は無かった。
俺の事を心配する両親の気持ちは有り難い。
けど、こんな同性愛上等!の学園へ入れるのは心配じゃ無いのか?!と最初は言ってやりたかった。
けど、その心配は無用だ……
何故なら俺は、平凡過ぎる容姿故、整った人間が集まったクラスじゃ、ミジンコ程にも相手をされない……
むしろ嫌われてるからね!!
まぁ、その理由は俺じゃ無くて、他学年に編入して来た男が原因。
無駄な大声を発する毛玉が、牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけて走り回ってる……そんな印象。
そして、その毛玉に生徒会をはじめ、学園の美形達は惚れて行った。
俺のクラスにも、生徒会メンバーである、俺様会長、インテリ副会長、チャラ男会計と3人の超絶イケメンが居る。
そんな彼等には是非、あの毛玉に惚れた理由を教えて頂きたい。
が、その前に俺はする事がある!!
このクラス……否、この学園にはびこる編入生は僕等の敵!っつう印象を払拭したいのだ。
そして俺は考えた……考えて考えて考えた結果、頭を使い過ぎて糖分が欲しくなり、あそっか、手作り菓子でも配れば良いんじゃね?って事で脳内会議は終了。
だってホラ、男は胃袋から掴めって言うじゃん?



――――――――――



次の日、俺は早速ケーキを焼いた。
ケーキと言ってもココア風味の素朴なパウンドケーキだ。
ここの寮は各部屋に立派なキッチンが完備されてるし、俺は奇数であぶれた為、通常なら2人1部屋の所を1人で使っている。
おかげで早朝からケーキを焼く事ができた。
どうせなら1日置いた物より、焼きたてを食ってほしい。
俺の作る菓子は、プロ並みに美味いもんじゃねぇけど、懐かしい素朴な味わいが身内には好評だった。







「…………美味しい!」



教室へ着くなり俺は、手当たり次第、クラスメートへ菓子を配った。
『おはよ〜はいコレ。』と、まるでティッシュ配りの如くテキパキと。
最初は訝し気だったクラスメートも、焼きたての匂いに釣られたのか、ケーキを口にする。
そうすれば皆『美味しい』と笑顔になった。
どうやら作戦は成功のようだ。



そんなこんなでクラスメートと打ち解け始めた頃、教室に生徒会の3人が現れた。
基本的に彼等は、朝のHRだけ教室に顔を出し、それ以降は毛玉を追いかけている。
菓子を渡すならとりあえず……――



チャラ男会計だな!
インテリ副会長だ!
俺様会長かな……?
後で生徒会室へ届けよう。


 
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