▼ 露出狂×被害者


雪もチラつく寒い季節とあって、完璧に油断していた。
この公園は二度と通るまいと誓ったのに、俺は己の誓いを破り、そしてまた、遭遇してしまったのだ。
例の¨露出狂¨に……――



「や、やあ゛、ひさ、久しぶりだね、君。きょ、今日はい、今までより、かえ、帰りが遅い、んだ、ね。」

「…………おいおい、まじかよ。」



俺は思わず目を見開いた。
何故なら露出狂が、露出スタンバイOKな状態で待ち構えていたのだ。
今日はパラパラと大粒の雪が降り続いている。
この露出狂が、一体いつからこの状態になったか知らないが、奴の頭や肩に、うっすらと雪が積もり、唇は驚く程青い。



「ちょ、あんた、露出する時期間違えてますよ!?早過ぎる露出の目覚めですよ!?春はもう少し先ですよ!?」

「はは、は!ぼぼ、僕は年中無休のろしゅ、露出狂なん、だよ!」

「いやいやいや、意味分からねぇし!めっちゃ震えてるし、あんた!」



俺は凍死寸前の露出狂へ駆け寄る。
よく見れば、雪に触れた肌が赤く染まり、何とも痛々しかった。



「はぁ……あんたね、露出するなら家の中だけにして下さいよ。こんな雪の中、馬鹿じゃないですか?」



『あーあぁ、元々お粗末な息子が、ますます縮こまってますよ。』と呆れながらも、仕方無く男に積もった雪を払ってやる。



「ああっ、熱い!!君に触れられた箇所が燃えるように熱い!!」

「……それはあんたが冷えてるからでしょ。ちょ、気持ち悪いからクネクネしないで下さい。雪に埋めますよ。」

「あっ、んあっ、な、何なんだこの、今までに感じた事のない体の火照りは!!」

「あーもう本当まじ黙れ。いいから服!服はどこですか?ここまで全裸で来た訳じゃないでしょ?」



いつまでも気持ち悪く体を揺らす男を余所に、俺は奴の服を探し始めた。



「と、このコートは見覚えがあるから、露出狂の服で間違いないな。他には………………おい、あんた。他の服が一切見当たらないんだが?」

「んっ、他の服は、ない、よ。」

「………………は?」



じゃあなにか?
こいつはこのコート1枚で公園まで来たのか?



「はぁ……あんたの筋金具合には、呆れしかありませよ。ほら、また雪が積もってきちゃうから、さっさとコート着て帰って下さい。」

「こ、断る!ま、まだ、帰るには早っくしょいっ!!」



ズズッズッと鼻をすする変態に、俺は無理矢理コートを着せると、自分のマフラーもつけてやった。



「こ、これ、は……」

「マフラー、あなたにあげます。返さなくて結構です。だから大人しく家に帰って、もう二度と俺の前に現れないで下さい。良いですか?明日の新聞に¨全裸の凍死死体¨とか、嫌ですからね。わかりましたか?」

「あ、ああ、どうもすまないね。」



『それじゃあ。』と俺は言い残し、その場を後にした。
全く、あんなガチガチに震えながらも、露出に走る変態の考えが、ますますわからない。
俺は先程まで見た男の状況を思い出し、ブルリと身を震わせた。






その後、マフラーだけを身につけた露出狂が公園に現れると噂で聞いたが、その真相は定かではない。






END



12.0228
『解せない話』の2人、受けがやるせない話。
受けは呆れて、攻めはひたすら興奮……と言う内容を頂き、露出狂に雪を積もらす話しが書きたくて、今回そのネタを使いました(^^)
時期が微妙に遅れた感はありますが、個人的に楽しかったです←
この度は素敵なリクエストありがとうございました!!^○^
 
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