▼ MI TSU DO MO E
例によって、とある山奥に存在する、小中高一貫した封鎖的全寮制男子学園。
その少し変わった環境で、(中略)道を逸れた者が数名。
高等部2年A組、名久井、富澤、宇城……それが彼等だった。
(side 宇城)
朝、教室に入って最初に、愛しの桃尻まいすうぃーとはにー異、名久井ちゃんの桃尻が目についた。
机にピンっと手を着いて、ツンっと差し出された桃尻は、誘ってるとしか思えない張り具合。
俺はたまらず、名久井ちゃんの背後へ近付くと、細い腰をやんわり抱き締めた。
「おっはあん。今日も超絶ぷりちーな桃尻だね、名久井ちゃん!!」
「ギャアアア!!出たな万年発情期!!脳みそピーマン!!あ……髪色的には黄色パプリカか。」
ふぅ……と息を吐きながら耳元で囁けば、何とも良い反応をしてくれる。
黄色パプリカの例えが気に入ったのか、ドヤ顔する名久井ちゃんはマジ天使!!
「あぁん、名久井ちゃん、このままテイクアウト希望!!」
「ヒィィイイ!!糞この野郎様ァア!!テイクアウトは受け付けておりません故、そのまま帰れ!!星へ帰れ!!脳内ピンク星まで1名様ご案なァアアイ!!」
「いやん、相変わらずツレない!!そんな所も可愛いんだけどっ。」
「…………宇城、おはよう。その、何だ…………俺は24時間、テイクアウト受け付け中……だ、ぞ。」
名久井ちゃんの桃尻を弄ろうと格闘していたら、何処からともなく奴(富澤)が現れた。
それも要らん台詞付きで!!
「はぁ?誰がテメェ何かテイクアウトするかボケ!!お呼びじゃねぇよ帰りやがれ!!」
シッシッと、手を振って拒絶すれば、『…………そうか。』と、富澤の小さな返事が聞こえて来る。
?……んだよ、その傷付きました!っつう顔はよ。
ふんっと、内心笑っていたら、名久井ちゃんの元気な声が響き渡った。
「い、いいい居ます!!ここここ此処に!!とみ、富澤君をテテッテッテイクアウトしたい人間が!!此処に居ます!!」
「っ!?ちょ、名久井ちゃ〜ん!!こんな奴テイクアウトするならぁ、俺にしてよぉ〜!!」
「お黙り変態!!変態こそお呼びでねぇよ!!大人しくハウスッ!!」
「…………そんなぁ。」
俺に見向きもしない名久井ちゃん。
流石の俺様も、ちょっぴり悲しいんですけどおーー!!
ああん、片思いって本当につら……
そこでふと、今さっき見た富澤の表情が脳裏をよぎる…………あいつも、俺と同じ気持ちなのだろうか?
富澤に近付こうと、机に身を乗り出す名久井ちゃん……それ(桃尻)を追う俺……の事を更に追う富澤。
そう思うと、胸がモヤモヤして来て……少し位、あいつにも優しさ提供してやるか、なーーんて。
「と、ととと富澤君なら、まい毎日テイクアウトしちゃう、ますっ!」
照れ顔で、富澤相手に桃尻をふりふりする名久井ちゃん………………
ええいっ!!やっぱりあいつは一生片思いしろってやんでいっ!!
(side 富澤)
何だかんだで最近、宇城と…………¨宇城¨と、名久井?だかの3人で昼を過ごすのが当たり前になっていた。
今日はコロッケパンを食っていたからか、宇城の唇がテカテカしていてイヤラシい…………そのあまりのイヤラシさに、思わずジーッと見つめてしまう。
「ああ゛?んだよテメェ、俺様の顔に何か付いてるか?」
「っ…………いや、付いてはいないが……宇城の唇は…………とても魅力的だな、と思って…………な。」
「…………あっそ。てか、それより名久井ちゃ〜ん!!食後のデザートに俺の唇はいかがぁ?もしくは、食後の運動でも構わないよぉ?」
『ギャアアア!!』と叫ぶ名久井?とやらを横目に、俺は宇城の唇で頭が一杯だった。
とは言え、先程のように見つめ過ぎてはいけない。
二度と気付かれぬよう、注意せねば!!
そんな事を考えていると、名久井?とやらのおずおずした声が聞こえて来た。
「と、ととと富澤君。ぼ、ぼぼぼ僕、実はくち唇のててて手入れは気を使っているんだ!!」
『どう、かな?』と、控え目に尋ねられたが、正直何の魅力も感じない。
「…………悪いが俺は…………お前の唇には一切興味が持てない。」
「…………そ、そっか。」
ははは、と無理して笑う名久井?とやらに、ズキリと胸が痛んだ。
彼は俺と同じ…………俺が宇城に思いを寄せ、胸痛めてるように、彼もまた、俺を好いて思い悩んでいる。
もう少し、真摯的に振る舞うべきだろうか………………
「名久井ちゃ〜ん!!そんなに凹まないで!!俺からしたら、魅力的だもん!!あいつの事は無視して良いよぉ!!」
むちゅっ!!と、力尽くで名久井?とやらの頬に唇を寄せる宇城。
………………すまんがあいつには、この先も片思いでいてもらおうか。
(side 名久井)
今日は朝から脳内ピンク(宇城)に邪魔されて、大好きな富澤君の匂いを嗅げないでいた。
実に遺憾である。
だが今日の僕は一味違う!!
「とっととと富澤君!!きょきょ今日は部活ですかっ?!」
「…………ああ、そうだが。」
「おうえっ、応援に行き行っても宜しいでございましょうか?!」
心臓がバクバクして仕様がない。
実は今まで、正々堂々と部活見学に行った事がないのだ。
いつもコソコソ隠れて伺う……ああ、なんて健気な僕。
祈るように胸の前で手を組み、彼の返事を待った。
「名っ久井ちゃ〜ん!!俺と一緒に帰ろぉ?そんでそんで、帰りに¨イイコト¨しちゃわなあい?」
「1人で帰れぇぇええ!!僕は今から、富澤君の部活姿を正々堂々見れるか頭一杯だこの野郎!!」
「ええーー富澤の部活って、剣道部でしょお?止めときなよ。名久井ちゃんまで汗臭くなっちゃう!!」
「キィィイイ!!富澤君は断じて汗臭くないわ!!お前こそ甘くて臭い!!ホラ、分かったらさっさと帰れ!!ヤリたいだけなら他あたれっ」
ベーっと舌を出してやれば、変態(宇城)は眉間にギュッとシワを寄せた。
「名久井ちゃん以外は有り得ない。それに、ただ帰るだけでも俺は嬉しいよ……」
真剣な宇城の言葉にハッとなった。
『富澤君の姿を見れるだけで嬉しい。』僕が毎日、思ってる事。
好きな人が側に居れば、何をしたかは問題じゃない…………宇城も、一緒なんだ。
少し、失礼な事言っちゃったかな?
今度からは気をつけよう。
「…………宇城、良ければお前も、……見学に来ないか?……特等席を用意するし、お前が応援してくれたら…………やる気が、出る。」
ハニカミながら、宇城にアプローチする富澤君。
特等席…………だ、と?
ケックソッ、脳内ピンクは一生片思いしてれば良いんだっ馬鹿野郎!!
END
11.1114
『MI TSU DO MO E』の続編と言う事で、相手の痛みを知り、成長したかと見せかけてーーの、結局変わらない3人(笑)
この子達は、ずっと3人で固まってるんじゃないかなーーと思います←
更新が遅くなり、申し訳ございませんでした;
伊織様、この度はリクエスト頂き、誠にありがとうございました^^