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最近の俺は、ちょっとおかしい。
どこがどう……って言われると答えに困るが、主に¨心臓¨の調子だろうか?
「榎本、お昼食べよう!!」
「…………お、おう。」
そして、芦田も……何かおかしい。
きっかけは分からないが、芦田は『榎本!榎本!』と、学校でも頻繁に声をかけて来るようになった。
その度にビクつく俺の心臓……断れば良いのに芦田を受け入れてる現実。
そのどれもが、¨おかしい¨のだ。
*
放課後、『一緒に帰ろう。』と言い残し、姿を消した芦田。
俺は仕方無く、2人分の荷物を持って下駄箱へと向かった。
もしかしたら、途中に芦田が居るかもしれない…………
ダラダラと踵の潰れた上履きを引きずって歩く。
昇降口に1番近い階段へ差し掛かった時、階下から人の話し声が聞こえて来る。
見つからない程度に覗き込めば、そこには芦田と、数人の男子生徒が居た。
「余計なお世話かもしれないけど、その、あいつ……榎本とは、関わらない方が良いと思う。」
上目使いで芦田に話しかけるナヨッちい男。
不意に聞こえた言葉に、胸がスッと冷えて行く。
「あいつ不良だし、きっと芦田君に悪い影響を与える。僕達は心配で心配で!!」
うんうん。と、他の男達も頷き賛同して行く。
こいつらに何を言われ、思われようが、傷1つ付かないが、決して気分の良いものではない。
このまま教室へ引き返すか……と、思った時、芦田の笑い声が聞こえて来た。
「あははは、心配?心配してくれるの?ありがとう。でもさ、本当に余計なお世話……だったかな。少なくとも俺は、君達より彼の方が人間的に出来てると思う。……心配してくれるなら、もっと気を使うべき所があった、よね?」
「っ!!」
にこりと冷たく綺麗に笑う芦田。
男子生徒達は、肩を震わせると、パタパタと何処かへ消えて行った。
俺はただ、呆然とその場に立ち尽くして………………
「あれ?榎本……荷物持って来てくれたんだ。ごめん、ありがとう。」
『じゃあ、帰ろうか。』先程とは違う、温度ある笑顔で芦田が言う。
「……ああ。」
俺は俯き、小さく返事をした。
――――何故か赤くなる顔を、見られたくはなくて。
11.1102