▼ 健気美形×性格男前


キラキラと、光りに当たって輝く飴は、まるで宝石みたいだ。
初めて彼――塩田から飴玉を貰った時、俺は塩田の笑顔に一瞬で心を奪われた。



掌に乗る小さなハート型の飴……これは塩田の気持ちの一部かもしれない。



そんな馬鹿な事を考えて、俺はその飴玉を雑貨屋で買った1番デカい、ガラス瓶へとしまった。
この瓶が一杯になった時、塩田の気持ちは俺の物になる……そんな願いを込めて。



塩田は会う度に飴玉をくれるけど、それがハート型とは限らない。
基本的に彼は、ありがとう、頑張れ、お疲れ様……と、言った意味を込めて、ハートの飴玉をくれる。
それ以外は、普通の丸い丸い飴玉。
でも、それが却って、ハートの飴玉を特別な物に感じさせた。



「もう少し……もう少しで、この瓶はハートの飴玉で一杯になる……」



そしたら自分の気持ちを伝えよう。
そう心に決めていた。



――――――――――



次の日、塩田は昼休み開始と共に、教室を出て行った……不思議に思い、クラスメートに声をかけると、予想外の返事に俺は戸惑った。



「塩田なら、女子に呼ばれてたぞ?ありゃ告白だな。」

「結構可愛い子だったし、あの野郎、地味なくせにモテるからズリぃよ。」



――――…………っ!!!!



俺は、クラスメートに礼も告げず、教室を飛び出した。
塩田が今、何処に居るのかも、見つけてどうするのかも分からない。
分からないけど、探さずには居られなかった。







「………………あれ、佐藤?」



廊下を走り抜け、階段を駆け下りて行く途中、塩田を見つけた。
俺の様子に、少し……驚いている。



「お前、何して…………」

「告白、されたの?…………可愛い子だって、聞いた。」

「っ…………あ、ああーまぁ、告白は、された、な。」

「………………俺さ、塩田から貰ったハート型の飴、全部とってあるんだ。こーんな大きいガラス瓶買って、1つ残らず大切にとってある。」

「…………佐藤?」

「………………その瓶が、もう直ぐ一杯になる。そうしたら、塩田に言うつもりだったんだ。俺は、塩田に飴を貰うのが嬉しかった。特に、ハート型の飴は、塩田の気持ちの一部に思えて……俺は、嬉しかったんだ。……塩田が、¨好きだから¨。」

「っ?!…………佐藤っ!!!!」



照れくさそうに話す塩田…………俺の中で、何かが切れた。
本当は言うつもりじゃ無かった……今はまだ。
それでも我慢できず、気持ちをぶつければ、塩田の声も振り切り、俺はその場から逃げ出した。






――――もう、何もかもが最悪だ。






適当に入った空き教室で、床に座り込むと、ポケットから¨カサッ¨と音がする。
手を突っ込んで確認したら、昨日、塩田に貰ったハート型の飴だった。



「…………これ、食べようかな。」



もう、大切にする意味が無い。
それならいっそ……食べてしまって…………この飴と一緒に、塩田への気持ちも…………溶けて無くなれば良い。



「…………無くなれば」







包み紙に手をかけたまま、俺はかれこれ30分も飴玉を睨みつけていた。
食べよう、食べてしまおう。
そう思うのに、いまいち踏ん切りがつかない。



「食べる……絶対、食べる!!」



ヨシッ!!と、気合いを入れた瞬間、ガラリと教室のドアが開いた。



「…………見っけ。」

「っ…………………………塩田。」

「お前が急に走り出すから、見付けるのに苦労した。…………何で逃げんだよ。」



真っ直ぐに俺を見つめる塩田。
……答えに詰まった俺は、無言で下を向く事しか出来ない。
そんな俺に、塩田は『まぁ良いや。』と、呟き、¨バリッ¨と言う音の後に『これやるよ。』と、大量の¨飴¨を降らせた。



「お前の言う¨もう直ぐ一杯¨が分からねぇから、店に売ってる飴……さっき全部買って来た。お陰で授業はサボリ。」



『ホラ、まだまだあるぞ?』
そう言って、バリバリバサバサ……次から次へと飴が降って来る。



「俺、本当は飴玉好きじゃねぇんだ。初めて佐藤に飴玉をあげた時……千円札をくずしたくて寄った近くのコンビニで、レジ前の棚にいっぱい並んでたあの飴を……たまたま買ったんだ。そんで¨甘党¨だって言うお前にあげたら、すげぇ嬉しそうに笑うから…………あれ以来、飴玉を切らした事が無い。…………もう、一杯になっただろ?俺の気持ち。」



呆然として動かない俺に、塩田は苦笑をもらすと、飴玉を1つ、握らせて来た。
見るとそれは、ピンク色をした……ハート型の飴だった。



「っ!!塩田、俺っ……――」






お前が好きだ。






そう告げた瞬間、沢山の飴玉よりもキラキラと輝く……彼の笑顔が眩しかった。









(俺も、お前が好きだ。)



END



11.0926
迷子な作品になってしまった;
 
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