▼ ××的恋愛しましょ!


「ホラ、今日の分!!」

「あ、ありがとう…………」



松下が実は腐男子とやらで、慎也に恋をしていた訳じゃないと知ってから1週間。
あの日以来、俺は毎日、松下からBL本と言う男同士がイチャコラする本を読まされている。
松下曰わく、慎也は180を越す長身で、気怠げに見えて、実は世話焼きな所が理想的受け像だと言っていた。
加えて、見た目も華やか過ぎず、適度な感じがどの攻めともマッチするとかしないとか……そんな松下の目下目標は、平凡×慎也……らしい。

まぁ結局、松下の熱い視線も、慎也に恋してる疑惑も、俺の勘違いだった……けど、素直に喜ぶ事ができない。



『恋愛対象は、女の子だし。』



松下はハッキリとそう言った。
俺だって、相手が松下じゃなかったら、男なんて願い下げだ。



「おい、高橋!あっちで内山が平凡優等生に絡まれてるぞ!これはフラグが立つかも知れない!」

「…………あれ、普通にノート回収してるだけでしょ。その内俺達の所にも来るよ。」

「ああ!指先と指先がごっつんこ!」



…………………………。



もう1つ、喜べない理由としてはコレ。
前にも増して、松下の頭は慎也で一杯になってしまったのだ。
今までは語る相手が居らず、1人悶々と内に秘めていたが、俺と言う話し相手を得る事で爆発してしまったらしい。
その彼のテンションに関しては、多少驚いても、素を見せてくれる事に喜びを感じている。
恋は盲目、とはよく言ったものだ。
俺は小さく溜め息をつくと、松下が持って来たBL本に手を伸ばし、パラパラと本を捲った。
ご丁寧に不透明のブックカバーがしてある。



「…………コ、レ。」

「ん?……ああ、それ気に入ったか?俺もその作者、好きなんだ。人気者×腐男子の新作。」

「…………腐男子。」



『ふざけんな!俺は腐男子でも女の子が好きなんだよ!』



本の中で、松下と似たような事を言う男の子が居た。
恐らく彼が、腐男子で……受け、属性なのだろう。
そんな彼に、挫けずアタックするイケメン……これが攻め、か。
そのまま本を読み進めていくと、何だかんだで2人はくっ付き、ハッピーエンドとなっていた。



羨ましいな畜生!!
俺だって、この2人のように……



「なぁ、松下。」

「んあ?」

「俺とさ、BL的恋愛しませんか?この本みたいに。」

「っ!?…………………………馬鹿じゃねぇの。」

「……………………で、すよね。」



さり気なく告ってみたけど、やはりそう上手くはいかない。
一瞬、驚いた顔をした松下も、一言言って直ぐに前を向いてしまった。



何してんだ……俺……



自己嫌悪に陥っていると、松下がチラリと此方を見た。



「…………俺、見た目は平凡だし、中身は腐ってるしで良い所ないけど?」

「…………うそ、良い所だらけじゃん。」

「…………あそ。」



暫くの沈黙の後、松下は俺の腕を引っ張り廊下へと引きずり出した。



「な、へ!?」

「内山が平凡優等生と何処かへ向かった!!追うぞ!!」

「いや、だからそれ、職員室とかじゃないの!?教室に戻「高橋っ!!」



『教室に戻ろうよ。』
そう言い切る前に、松下から強く名前を呼ばれ、思わず歩みを止めてしまった。



「…………まつ、した?」

「…………俺、最近は腐男子受けにハマってんだ。だから……その、腐男子として、BLを体験してみるのも悪くないっつーか……だから、その、つまり……してみるか?BL的、恋愛。」

「っ!!………………是非!!」



『ああ、クソッ。実際はこんなに恥ずかしいのか!!』と騒ぐ松下の手をとり、¨慎也達を捜す為¨に再び走り出した。



……そう、先ずは¨屋上¨でも捜しに行きますか!!



END



11.0606
 
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