とてつもなく危ないと思う時がある。
何処までも堕ちていく感覚。
戻れなくなってしまう予感。
粘っこい闇に捕われたように、漠然とした危険に身が竦む。
自分という感覚が失くなる。

ああ、ヤバい。

「・・・・・・ん、」

そう呆然と思った時、横から声が聞こえた。
堕ちそうになった思考を何とか引き戻して、声のした方を向く。そこには一糸纏わぬ忍が眠っていた。
顔の装飾を取り、普段よりもあどけない表情をしている忍はただ寝返りをしただけらしく、すうすうと規則正しい寝息をたてていた。
先程までの行為の所為か、額に張り付いた髪をかき上げてやると、また小さく声を上げた。
その様子に笑みを零し、髪を数回梳いた後静かに布団から出た。ひんやりとした空気が肌に心地よい。
相手は忍だ。音を発てないように注意しながら縁側へと出る。外は月明かりに照らされていて、少し明るかった。満月でも三日月でもない中途半端な月が、中途半端に辺りを照らす。
中途半端に照らされた草木を見ながら、縁側に座った。

とてつもなく危ないと思う時がある。
何処までも堕ちていく感覚。
戻れなくなってしまう予感。
粘っこい闇に捕われたように、漠然とした危険に身が竦む。
自分という感覚が失くなる。

あの時、声がしなかったら本当に危なかった。

こんなご時世だ。腹心なんかさらけ出せないし、出す訳にはいかない。
善意か悪意か分からない、信じきれない他人。
毎日部下の命を握り、采配一つで左右される命。弱音を吐けない、責任の重い身分。命を消していく腕。
こんなご時世だ。しょうがない。
しかし、一個人には重過ぎる。

そんな理由があるのかもしれない。もしくは幼少期の待遇によるものかもしれないし、理由なんかないのかもしれない。

危ないと思った時にはもう遅く、思考は下へ下へと堕ちていく。
全てが悪い方へと向かっていく。

あの時、部下を殺したのは自分ではないか。
判断を間違えたのではないか。
良い気になっていたのではないか。
慢心していたのではないか。
本当に、自分は正しいのか。
ただの自己満足に周りを巻き込んでいるだけではないのか。
忍は、何故自分といるのだろう。
好きだと言われる価値は、自分にはあるのだろうか。

「くそ・・・っ!」

思考が絡まる。
堕ちていく感覚がする。
戻れなくなる予感が点滅する。
粘っこい闇に捕われたように、漠然とした危険が身を飲み込む。
自分という感覚が失くなる。

先程まで感じた体温が妙に遠く感じ、光を求めて影から手を伸ばす。
しかし中途半端な月が計ったかのように姿を隠した。
手は影しか掴めず、思わず笑う。
隠れた月が笑っているような気がした。






悄然メランコリー



伸ばされる手はまだ掴めない。

















――――――――

書いといて何だけど、政宗は絶対に病まないと思う。
佐助くんも好きとか言わないと思う(私の中では)。

珍しい筆頭が書きたかっただけさ!



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