1.アルヒノコト

庭で亀が透明な水に微睡んでいる、私は少し青いガラスに注がれた甘くない炭酸水の方が好きだったのだけれど彼は十分に幸せそうで。(彼、ではなく彼女だった気もしたがそんなのは私にとってもそう呼ばれた彼にとっても酷くどうでも良い話である。)温くて優しい午前だった、今なら世界の全てを愛せそうなまでの錯覚はゆるりと水槽までを包みこんで嗚呼ウラヤマシイ、隣で水を蹴る彼と並んでとめどない気泡を縫い飛びたいけれどそれにしては余りにも泳ぎが下手すぎたのだ、私は。
「ねえ、」
わたしはうまれかわったらとりになりたいよ、(きっとありきたりな願いなんだろうけどそれでも、だからこそ地に足を着けるしかなかったニンゲンは空を翔ることを夢見たのではないか?)
「ねえ、」
きみはやっぱりそのすがたでありたいのかい、(そういったクダラナイことを考えるのは私達だけなんだろうけどきっと、きっと答えを求めるならそういうことなんだろうね?)
温くて優しい午前だった、蓋のない檻の縁に手をかけ欠伸をしながら水を蹴る彼を視界の端に捉えながら一緒に微睡ん、デ、(じりり、と夏を焦がす午後が来ることに誰も気付いてはいない。)



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