カシュッと清々しい音に次いで、白い泡が立ってゆく。溢れ出すそれに慌てて口元を寄せた。

「ンマー、行かなくてよかったのか」
「いやぁあの人の多さはちょっと」

隣へ腰を下ろした彼の手には缶ビールと枝豆。「お疲れ」「お疲れさまです」カツン、と缶同士が軽くぶつかる。

「何時からなんだ」
「えーっと、あ、あと5分くらいです」

じんわりとした暑さの中を、秋の香りを感じる風が通り抜けた。

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夕飯の買い物を終えて歩いていると、カランコロンと下駄の音がいくつか響いていることに気付いた。音の方を見やれば華やかな浴衣に身を包んだ女の子たち。目線の先には「花火大会会場まで後100m」の立ち看板。最後に浴衣なんて着たのはいつのことか。ノスタルジックな気分になったも、すぐにそれはかき消されてしまう。その立ち看板の先にうねるような人の波が見えたのだ。さあっと体温が下がる。私はいそいそと家路への道を急いだのだった。

夕飯の支度を終えた頃、ドンと大きな音が一度だけ鳴った。ベランダの外を見てみると例の花火大会の会場と思わしき場所の上空に白い煙がふわふわと浮かんでいた。なんだ、試し打ちだったのか。肩を落とすも束の間、私は閃いた。もしかして家からも見えるんじゃないか、と。これは名案だ。「なんじゃなんじゃ、お熱いのぅ」「てめェまたそんな格好を!!足を隠せ!!足を!!」「カップルで見るのに相応しい場所、お教えしようか、ポッポー」なんて同僚たちに冷やかされることもなく花火が楽しめるではないか。意気込んだ私はそのままコンビニへ走り、枝豆といくつかの肴を揃え、ビールもキンキンに冷やしてアイスバーグさんの帰りを待った、というわけなのだ。

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この後はベランダで立ち飲みしながらアイスバーグさんと「おれのために浴衣着てくれないのか」「『女に着せたい服は脱がせたい服』ってやつですか」「ばれたか」みたいな会話するゆるーい展開。ヒロインはさらりとセクハラ発言を交わすけど、来年もこうしていられたらいいなぁとかこっそり思ってる。ばかっぷる。

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