ざーん、と波の音が遠くでしている。ウォーターセブンの屋根の上で寝そべる。夜空には星々がたくさん瞬いていた。ロマンチックなこのシチュエーションの中、わたしたちはロマンチックのロの字もない話を繰り広げていた。

「ゴキブリってなんで飛ぶんだろうね」
「そりゃあ、あれじゃ、自分でも意識してないんじゃよあやつらは。なんか分からんが飛べたみたいな」
「何それ気持ち悪い」
「聞いといてなんじゃその言い草」

なんだか哲学の話っぽく聞こえる気がする。ちなみにわたしは哲学を知らない。
パウリーによれば哲学とは鉄の話だそうだ。うーん、これ絶対嘘だ。

「知ってる?オリオン座のあの三つ並んだ星って串だんごらしいよ」
「えー」
「ちょ、なんでそんな顔するの」
「それ誰情報じゃ」
「パウリー」
「ばかじゃなぁ」

お主もあいつも。けらっと笑ったカクの後ろには夜のウォーターセブンが広がる。ふわり。カクの頬に手を寄せた。「どうしたんじゃ」カクもわたしの頬に手を伸ばしてきた。

「カクってさ、ふらっと現れて、ふらっとどっかに行っちゃいそうだなーって」
「……さっきまでの空気はどこいった」
「あはは、あんまり景色が綺麗だから感傷的になった」

ちょっとロマンチックだねえ。くふふ、と笑いが込み上げる。わたしの頬を撫でていた手は頭の後ろに回って、ぐいと引き寄せられてキスされた。目を開けたままにしているとカクの瞳と目が合う。睫毛ながいなあ。一瞬だけカクの瞳が揺れた気がした。

「…わはは、顔、真っ赤」
「うるさい。カクこそ急に何よ」
「キスしたくなったからキスした」

カクと初めて会ったのはいつだったかな。それこそ5年くらい前か。こんな関係になった経緯はあんまり覚えていないけれど、お互いそんなことは気になっていないのだ。

「好きじゃ、愛してる」そう言ってカクはもう一度キスをしてきた。ずるいなぁ。普段は絶対そんなこと言わないのに。

そういえばカクに告白された場所って今日この場所だったっけ。そうして今日みたいに顔を赤くしてキスしたのも。なんだかこれってまるで、

「遺言、みたいじゃない?」



130623 改編:150412
SPECIAL THANKS:はらから/蜂子さん
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