こんこん、とドアをノックするとゆるい返事が返ってきた。持っているコーヒーを溢さないように気を付けてドアを開けてわたしは驚いた。
「ジャブラが眼鏡かけてる…!!」
コーヒーをほおり投げてしまうのをぎりぎり堪えた。頑張ったわたし!
「…おれが眼鏡してたら悪いか」
「いや…あ、コーヒー持ってきたよ」
「適当にどっか置いとけ」
適当に、と言われてもジャブラの部屋は軽く草原だから置くにも置けない。どうしようと迷っていたら、ぱさぱさ、と紙の捲れる音がした。あぐらをかいて座るジャブラの足の間にはとてもジャブラに似合わない分厚い本があった。
「任務の資料?」
「まァな」
「ちゃんとしたとこで読めばいいのに」
「自分の部屋が一番集中出来るんだよ」
「ふうん」
とりあえずジャブラの傍に積まれていた本たちの上にコーヒーを置いた。
「じゃあわたし戻るね」
「何で」
「何でって…わたし邪魔になるでしょ」
「ならねェよ」
ちょいちょいと手招きされてジャブラに近づく。すると手を引っ張られて、ジャブラの足の間に座る格好になった。ジャブラはわたしの前に腕をまわして本を読むのを再開しだした。
「なによ?」
「ここにいろ」
頭の上から声が聞こえる。ジャブラはわたしの頭に顎を乗せているらしい。さて困った。
「ジャブラぁ」
「あ?」
「ジャブラは本読んでるからいいだろうけど、わたし暇」
「…コーヒーでも飲んでろ」
それ、わたしがジャブラのために淹れたのに。ちょっとむくれていると「これ読んだら、構ってやる」とちょっと照れたような言葉が届いて、わたしは少し冷めたコーヒーを口にした。
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