ルッチとクッキー
ひっひっふー。ひっひっふー。大丈夫、落ち着いて、私。控えめだけど可愛らしい模様が施されたラッピング袋には赤いリボンを。中身は手作りクッキーと想いの詰まった手紙。今日は決戦の日。今日こそ告白するのだ!と意気揚々に彼の部屋の前まで来たものの、何もできずにただ扉の前でうろうろせざるを得なかった。巡回している兵士に変な目で見られる。CP9に向かってなんだその目は!
こんこん、ノック一つすれば事は進む。さあ手を伸ばして扉を叩くだけ。頭では分かっているのだがどうにも体が動かない。…そもそも彼は部屋にいるのだろうか。任務に出ているかもしれない。じゃあ、テーブルかどこかの上に置いておけばいいんじゃないか。そうすれば、会っててんやわんやすることもない。完璧だ。ふう、と息を吐き切って扉に手をかけた、
がそれと同時に扉が開く。そこには彼が立っていた。
ばくんと心臓が跳ねる。「何か用か」わあ、うわあ、こんな至近距離で見たの初めて。どこ見たらいいんだろう。息が苦しい。
「あっそっそういえば、長官が呼んでたんだった!私行ってきますね!!」
脱兎の如く走り出す。何か変に思われただろうか。うう、憧れの人とのファーストコンタクトがこんなになるなんて!もっとロマンチックでアダルティな…って、あれ?クッキーがない…。
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「おおルッチ…どうしたんじゃそのクッキー」
「扉の前に落ちていた」
「ほーお…。クッキーマンの形じゃな。食べるのがもったいないんか?わしが食べてやろう」
「お前は草でも食ってろ」
「なんじゃと!?」
クッキーを噛んでみる。ガリッ。…ガリ?
150515