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ボンゴレの10代目ボス、沢田綱吉とボンゴレ暗殺部隊ヴァリアーのボス、XANXUSは仲が悪いことで有名だ。
仲が悪いというよりも、XANXUSが一方的に綱吉を嫌っていると言った方が正しい。

10年前、ボンゴレのボスの座を争い、誰もがXANXUSの勝利を確信していたのにもかかわらず、実際は綱吉が勝ったのがこの関係のはじまりだ。
最初はXANXUSの全面的な否定にへこたれ、ウジウジと悩んでいた綱吉も2年もしたら慣れ、5年後にはスルーできるようにまでなった。
綱吉はこれで慣れというものの恐ろしさと偉大さを存分に味わった。


例えば先程、ボンゴレの定期会合が行われたのだが、綱吉の意見をXANXUSはくだらないの一言で遮った。
それからも会合中は綱吉の意見すべてを否定。
さらにすすめられた高級酒もかんなもの飲めるかとグラスを割る始末。
それを綱吉は怒るわけもなく笑っているのだ。
その場にいた全員が内心焦っていた。
そのまま綱吉の意見の半分は可決されたわけだが、その後も酷かった。
XANXUSからの抗議はなかったが、まず獄寺が煩かった。
なんで好き勝手に言わせるんだとか、なめられたらどうするんだとか散々言われ、綱吉はそれをあいつにも考えがあると笑顔で治めることしかしない。
獄寺は渋々だが食い下がり、その場をやり過ごせた。
他にも綱吉の態度に意見を言う奴らはいた。
しかし綱吉はそれを見事にスルーしたのだった。

一部始終を見ていたリボーンはため息をついた。


「おいダメツナ」
「ん?」
「そんなんじゃボンゴレは潰れねーぞ」
「…まぁね。でも、もがくしかないんだよ」


綱吉はリボーンに自嘲気味に笑って、部屋へと戻った。

扉を開けて唯一のプライベート空間である自室に入る。
大きな部屋は落ち着かなくて、あえてそれよりも少し狭い部屋を用意してもらったのだが、それでも綱吉にはまだ広いぐらいだった。
それでも我が城はやはり落ち着く。
上着を脱いでシャツとズボンだけになり、ソファに身を沈め、ようやく息を吐いた。

コンコンと壁から軽い音がする。
綱吉はテーブルの下に隠してあるボタンを押した。


「よぉ」


壁が開き、そこから出てきたのはXANXUSだった。


「こんばんは、XANXUS」
「…疲れた顔してんな」
「獄寺くんがね、」
「あぁ、あの駄犬か。あんな躾もなってねぇ雑種、捨てちまえよ」
「そういうわけにはいかないよ」


XANXUSは綱吉の前のソファに腰を下ろした。
綱吉はテーブルに用意してあったワインを開けた。
二つあるグラスにそれぞれ注ぎ入れると、XANXUSはすぐに飲み始めた。
一応高級なワインなのだが、XANXUSは気にせずに水を飲むように飲んでいく。
対する綱吉は酔いやすいのでちびちびと飲むのが当たり前だった。


「で、いつまで俺はテメェに歯向かってればいいんだ?」
「んー…あと少し?」
「そう言って10年だ。もうそろそろ頃合いだろ」
「それは、そうだけどっ」


綱吉は息を詰めた。

表向きではXANXUSが一方的に綱吉を嫌っているとされているが実はそうではない。
むしろその逆で、XANXUSは綱吉を好いている。
10年前のリング争奪戦に負けてから、XANXUSは燃え上がるほどの激情を綱吉に抱き、その感情をもってして綱吉に尽くしてきたわけである。

しかし綱吉はその感情に答えることはできないくせに、答えるフリをするのだ。
そのことに今でも綱吉は胸を痛めることがある。
けれど綱吉はその感情に答えないだけではなく、利用すらしているのだ。

綱吉には未だにボンゴレを潰すという野望をなくしてはいない。
いくらボンゴレを変えたとしても意味のない殺戮は減ることはない。
山本や了平のように関係のない人間を巻き込んでしまうこともある。
ボンゴレを潰せば少しは変わるかもしれないと考えている。
それにXANXUSを利用しているのだ。
綱吉だけではどうにもならないが、XANXUSがいたら希望はある。
綱吉の考えはこうだ。XANXUSに自分のすべての意見を反対するようにさせ、自分に反感を持つものを増やす。そして嫌ならやめろと言う。
そうすればやめてく人間もだんだんと増えるだろう。
綱吉にはこんな考えしかなかったが、実際、ボンゴレはこの数年で確実に人は減ってきている。
信憑性もまったくない計画だったが、ここでようやく希望が見えてきたところだった。


「もう少ししたら、なにもかもうまくいくから」


綱吉はワインをまた継ぎ足した。

(そしたらXANXUSも、ちゃんと解放してあげるから。)


俺に縛られたままは、かわいそうだから。










XANXUSは目の前で笑う綱吉に甘いと思った。

綱吉の考えなんざとうの昔に分かっている。
分かっていたからこそ、誘いに乗った。
そうすれば綱吉は自分を利用せざるをえない。
XANXUSはそれを逆手に取った。
自分が綱吉に反対していれば、必ず綱吉に反する者がXANXUSを頼り、擦り寄ってくる。
そんな綱吉の敵に成りうる奴らを徹底的に排除することがXANXUSの目的であった。
ボンゴレで年々人が減っているのはそのせいだ。
しかし綱吉を慕う者は多く、最近では入りたいと志願する者も多い。

そもそもボンゴレは綱吉の思うように簡単に潰れる組織ではない。
マフィアのトップといっていい組織がそんな柔であるわけがないのだ。
綱吉はきっと必死でそんなところまで考えがまわっていないのだろう。
愚かで、愛しい綱吉。


「安心しろ綱吉。テメェは俺が守ってやる」


そう、このままずっと、逃がさない。

XANXUSは未だ燃えつきることのない激情を宿した獣の目に綱吉を映して笑った。




【三谷希】
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