「ひゃっふー!!気持ちいー!!」
「バカか、寒い!閉めろ!!」
「え?なに?」

冷たい風を頬に受けながら、車は勢いよく海辺を走る。
窓は全開。ちょっと寒いけど、それも気持ち良かった。

今日も今日とて執務室を抜け出して束の間のドライブ。
時期的にさすがにオープンカーはやめて今日はちゃんと窓だけ開けて、助手席ではしゃぐ俺を窘めるザンザスが隣にいる。こんな日常が幸せと感じるなんて、俺もすっかり焼きが回ったな。

「閉めろ!寒い!」
「いいじゃん。風に当たるの久々なんだって」

着崩したスーツ、緩めたネクタイ。
ザンザスはラフな格好で、面倒くさそうにハンドルを握っている。と思ったらぬっと右手が伸びてきて、窓の外に乗り出すほど傾いていた頭を叩かれた。

「っいて!」
「振り落とすぞ、カス」

チラリと向けられた緋色がちょっと本気の色をしていたから、大人しく窓を閉めた。あーあ、せっかく気持ち良かったのになぁ。

「じゃあ車置いて風に当たりに行こうよ、海岸!」
「人の話聞いてんのか、寒ィって言ってんだろうが」
「えー、いいじゃん行こうよー」

運転を邪魔するとそれこそ本気で怒られるから、グチグチ文句を言ってみるけど効果はなさそうだ。
なんだ、つまらない。
そうだ。俺はいいことを思いついて、顔に出さないように腹の中でニヤリと笑った。

「ねぇザンザス、」
「行かねぇって言ってるだろ」

視線が一瞬来る前に、その頬にキス。ちゅ、と音を立てて離れる。

「ねぇ、行こう?」

微笑んだら、ザンザスは観念したように小さなため息を吐いて。

「…分かったよ」
「やった!」

両腕で小さくガッツポーズ。

「ずっと一緒にいようね、ザンザス」
「せいぜい身を削って働くんだな。」

ザンザスの口元が緩んだ。

【くろは】
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