「好き。」 / 手塚 光



どうすれば、この想いを彼に伝えられるのでしょうか。






彼と私は所属部署も違えば、入隊時期も異なり共通点と呼べるものは一切ない。

私は主に通常の図書館業務を担当する業務部。
彼は防衛業務を担当する防衛部。
そして、その防衛部の中でもエリート中のエリート集団、図書特殊部隊に彼は所属している。




「あ、今日はこっちなんだ…。」

カウンター越しに図書整理をしている彼の姿が見えて、心臓がどくりと音を立てた。


ああ…。今日もかっこいいなぁ…。



週の中日は比較的空いていて、今日は彼の姿をたっぷり拝むことができそうだ。

弾む心を隠すことができず、じっとそのまま見つめていると、不意に彼がこちらを振り返った。


うわ、まずい!
目が合っちゃった…。


慌てて視線を手元の書類へ落とす。心臓は先ほどの甘やかな鼓動とは違い、冷ややかなものへと変わった。


ずっと見てたの、ばれたかな。
気持ち悪いって思われたらどうしよう!


いつまで経っても顔を上げられずにいると、突然目の前に影がさした。

「あの。」

「は、はいっ!」


まずい、利用者かも!と慌てて顔をあげて、すぐに後悔をした。


「名字士長、ですよね。よく視線を感じるんですが、俺何かしましたか?」


彼が。手塚君が今、目の前にいる!!


「え、あ、いや、あの。」

「名字士長?」


混乱と緊張で上手く喋れない私を、手塚君は不思議そうに見ている。


どう答えればいい?どうすれば!?


うっすらと涙も滲んできた。きっと頬は真っ赤に染めあがっているだろう。



「…っ!」

何も言えなくなって、どうすれば分からず、ただじっと見上げていると手塚君が急に顔を赤らめて手の甲で口元を隠した。

その反応にまた心臓がどくりと音を立てた。それは今までとは比較にならないほど、私の中を揺さぶって。


次の瞬間、何も考えずに無意識に出た言葉に私はこの後ひたすら後悔することになる。









「好き。」
(えぇ!?!?)(…え?)
(今、あの…その、好きって…。)
(…え、あ、あああああ!!!!)




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