Wait a second. 【幸村×ブン太】

怪奇現象かと自分の目を疑った。
けれど、そんな事はあるはずもなく、彼の仕業だ、としゃがみ込んで項垂れた。

「聞いた事ないよ…プレゼントを返すなんてさ」

俺のロッカーに入っていたのは、今朝ブン太にプレゼントした物だった。
今日はブン太の誕生日で、一か月以上も前から考えて探して、用意した物だって言うのに。
恩を仇で返す、じゃないけどさ、人の好意を何だと思っているんだ。
わざとブン太に聞こえるように呟いてやる。

「いらない訳じゃねぇから」

だったら尚更、貰って欲しい。
俺とブン太は恋人同士なのに、どうして誕生日プレゼントを返却されなくちゃいけないんだ。
中身を空けて気に入らなかったのならば、まだ気持ちは理解出来るが、開封すらしていないのに。
一度開けてみたらいい。
絶対ブン太の喜ぶ物を選んだ自信もあるし、初めて手紙も書いてみたんだ。
つまらない男が書いた手紙だから、期待しないで読んで欲しいけれど。

「どうしたらいいの?」

受け取ってくれないと、困るんだ。
俺の誕生日はケーキを作ってもらったし、お洒落なスタンドミラーを頂いた。
誕生日に割れ物って常識的にマズイのかな、と不安そうなブン太の顔が忘れられない。
だから、君の誕生日にも君に似合うプレゼントを贈って、日頃の感謝と抱えきれない程の愛を届けたいんだ。

「卑怯なんだよ、靴箱に入れるのなんて。何か言って直接渡して欲しい」

靴箱に入れたのは、俺なりのロマンチックな演出のつもりだったんだけど、どうやら不評らしい。
開けた瞬間の喜び、感動、絶対に当たりだと思ってたんだけどな。
とにかく外れなら仕方ない、プレゼントを手に持ち、ブン太の前に立った。

こういうのは跪いた方が良いだろうか、いいや、誕生日としてはやり過ぎか。
両手で丁寧に持ち、軽くブン太に頭を下げて差し出した。

「……お誕生日おめでとう」
「普通。却下」

自分でも迷いがあったから却下される運命は予測出来た。
次は笑顔も添えて挑戦してみる。

「生まれてきてくれて有難う」
「どっかで聞いた事ある。却下」

ダメなの、と聞くと、同じ言葉で壁を作った。
それならば、思い切って言い切るしかない。
一度は選択肢から消し去ったが、跪いてプレゼントを掲げる。

「好きです。結婚して下さい」

ブン太は息を飲んで、頬を赤く染めた。
成功だ、と思ったがブン太は俺から顔を背ける。

「それを言う時には渡す物が違うだろい。指輪持って来い。却下」

確かに、結婚の申し込みをする時には指輪が必要で、俺が今持っているものとはかけ離れている。
俺達は結婚出来る年齢でもないし、男が結ばれるなんて不可能だ。
ふふっ、と自然と漏れ出す、俺の笑い声。

「じゃあ、これだ」

上着のポケットから、紺色の小さい箱を取り出す。
ブン太は不機嫌とも仏頂面とも呼び難い中間の表情で、俺の顔と手元の箱を交互に見つめた。

「…何?」
「指輪」
「えっ?え?」

お手本通りの素晴らしい反応だ。
フライングして笑っておいて良かった。

「これは誕生日プレゼント、こっちはプロポーズの時に持って来いって言った指輪だよ」
「俺より一枚上手って事な…」

何となく、これが必要だと俺は気付いていた。
周りのカップルはペアリングを堂々と見せびらかしている中、俺達は交際すら隠し過ごしている。
感情を素直に表現するブン太が、沢山の人に嘘を吐いて生きている、その息苦しさ、もどかしさ、堪えてくれている事には心底感謝している。
俺を愛するだけで障害があるなんて、申し訳なく思っている、それを全て拭う事は出来ないけれど、ほんの少しの還元のつもりだ。

それと、俺の覚悟の表明。
本気だよ、いつまでも君を愛すると決めたんだ。
いつも前向きで笑顔で可愛い、君の誕生日だから自分の気持ちを素直に告白したい。

ブン太は微かに震える手で、指輪の箱に触れた。
開けて中の指輪をお披露目しようとすれば、それはブン太が優しく包み込んで阻止。
そして、俺に箱を突き返すのだ。

「預かってて。まだ、幸村くんの恋人で居たい」

ブン太は俺の胸に寄り掛かってきたから、そのまま彼の身体を抱き締めた。

「俺もブン太の恋人、もう少し楽しもうかな」

触れるだけでドキドキするし、君の事だけで精一杯な俺は、まだ特訓期間が必要だ。

end



【コメント】
等身大のプロポーズで優しい時間を表現してみました(^-^)
天才的でカッコイイ王子様!ブン太くんが大好きです!大好きな物お腹いっぱい食べて、大好きなメンバーとテニスを楽しんで頂ける事を純粋に祈ってます。
ブン太くんお誕生日おめでとーぃ!


HN:おおくみあき 様
HP:モシリ


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