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ジンバン

人間の残骸のような世界で育った僕の、世界で唯一本当の体を持った人間だった。人間だったはずだ。力で抑えつけようとすれば血を流したし、言葉で抑えつけようとすれば涙を流した。彼こそ本物の人間であるべきだ。僕の世界には赤いオイルが流るやつしかなかった。目から水を出す構造はしていない。「君はきっと天使か神様なんだろう。」「じゃあジンも神様だよ。」「違う。僕はきっと生き物ですらないんだ。」「じゃあ俺も、ジンと一緒がいい。」君と対等になってみたいものだ。肌に触れて、交わってしまえば。それでも無理だろうか。「ジンて、何。」「え。」「生き物じゃないならなんなの。」「ええと。」きっと僕は人間だ。君を守れば傷を負うこともあるし、君を思えば声をあげて泣くこともある。「俺、ジンとおんなじになるよ。そしたら、ずっと一緒。そうだろ?」知っているかい、バン君。神様はどんなものにでも姿を変えられるんだ。

御法度

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