わたし


高校の引退をかけた、最初で最後の試合は負けて、私の部活の青春は大きな音を立てながら幕を閉じた。

そうしたら、今度は音も立てず、存在さえ知らなかった奥の奥の方にある扉が、ゆっくり開いた。

「ごめんね…!本当にごめんね…!私があの時、もっと動いていたら、相手から点、取れたかも、知れなかったのに…!」

「そんな事無いよ。美絵が居なかったらあたし、ここまで来れてない。あたしだけじゃなくて、みんながそう思ってる。あたし等の部長になってくれてありがとう。」

「〜〜!詩織ー!ごめんね!」

私に抱きついて、ポロポロ大粒の涙を流すバレー部の主将は本当に今までよくやってきたと思う。初めてレギュラーになった私と違って一年生の頃からレギュラーで、練習もサボらず、かといって生真面目すぎる訳でもなく、皆からも人気で、先生からも気に入られて、コーチ達からも可愛がられる。なのにそれを鼻にかけることもなく、美絵は美絵でバレーを楽しんでいた。そんな模範的で、優秀な美絵に触発されて二年生の後半からまじめに練習をはじめ、部員もそこそこいるバレー部のセッターになれた。だから今回の初戦敗退も本当に悔しい。相手が優勝校だとしても、悔しい。
周りのメンバーも泣いている。私だって、泣きたい。


けど、悔しいはずなのに

なぜだか、どうして





「どうでもいい。」


 



そう考えている自分が居る?


ある人は、泣いている人を慰め、
ある人は、リベンジを誓い、
ある人は、悔しくて泣いている。


そんな中、私は
もういいや。面倒くさい。

そんな事ばっかり考えていた。


なんなんだ、これ。


大勢の中にいるのに

一人ぼっちな気分。

今私が背中をさすっている美絵でさえ、額の中の絵のように感じてしまう。
その涙も、悔しさも、すべてが本物なのにまるで何も感じない。


私ってこんなに
心が動かない人間なの?

不思議。

きっと、思春期特有の気持ち悪い悩みなんだと思う。
思春期は人生の中の一瞬の時間だけど、今の私たちから見たら凄く凄く長い時間なんだ。


だから、この思いを誰か教えて。


どうして私は
素直に考えられないの?




「天邪鬼」








世界で一番私にピッタリな言葉だ。





-End-

 

[back]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -