ずっとずっと


「好きです。」

3月14日。ホワイトデーの日
僕は幼馴染みの子に告白しました。
初めて好きになった人
初めていとおしいと思った人
初めて恋をした。

最初は只の幼馴染みでした。
好きと言えば好きでしたが、それは友達としての好きでした。

何時からこの気持ちが恋へ変わったのかはよく覚えていません。
ただ、気がついたらあの子の事ばかり考えている。目で追っている。そばに居たいと思っている。こんな気持ちは初めてでした。

でも、あの子は僕のことを只の友達としか思っていません。
だから側に居てくれました。
部活もあの子が居るからと言う理由でテニス部に入りました。後悔はしていません。

部活帰り、僕は幸せでした。そして同時に辛いものでもありました。
だってあの子と帰れるのですから。
家が近いという理由で、本当に自然に一緒に帰っていました。もちろん、どちらかが『一緒に帰ろう』なんて一度も言ったことはありません。
ただ、なんとなく、すんなりと帰るようになっていました。
もちろん、約束ではありませんからあの子が先に帰ることもありました。その度、僕はわざとらしくあの子を追いかけるのでした。(あとで聞いた話ですが僕のあの子への思いはどうやら部員全員が知っていたようです。知らないのはあの子だけ。)
そんなわざとらしい僕にあの子は笑顔でこう言うのでした。「来るの早!なにかそんなに急いでたの?」
貴女の一緒に帰りたいから、なんて言えません。言えたらどんなに素敵でしょう。

でも、僕には無理でした。
恐かったからです。
もし告白をして、好きだって伝えたら彼女は今まで通りに笑顔で居てくれるのか?変わらないで話しかけてくれるのか?そんな思いばかりぐるぐると頭の中を巡る、廻る。

僕は弱虫です。
本音の一つもあの子に言えない。

恋をすれば人間変わるって、友達から聞いたことがありました。
なるほど、確かに僕は変わりました。
今まで気にしていなかった服装に気になり始め、あの子と楽しそうに話している男子に嫉妬したりしていました。
前までの自分には、考えられないことでした。

バレンタインの日僕はあの子からクッキーを貰いました。僕だけではなく部員みんなにですが、そんなことは構わず嬉しかったです。
実は前からも貰っていました。でもそれは通過行事のようなもので失礼な話ですが、ありがたい。としか思ってませんでした。
でも今年は違う。
「好きな子からのプレゼント」
例えそれが義理だとしても。
嬉しいものは嬉しいのです。
「お返しは3倍だよ!楽しみにしてるね!」無邪気に僕に話し掛けてくる彼女。ああ、本当に僕は素敵な子を好きになってしまいました。

ある日、あの子が風邪を引き学校を休みました。元々体が丈夫ではない子です。心配で心配で授業なんてろくに聞けませんでした。
そんななか、あの子の友達が僕の側に来て話し掛けて来ました。
「あの子と付き合ってるの?」
まさか、と答えました。そうなれたら幸せだけど。という本音はもちろん隠しましたが。
「え、嘘でしょ。いっつも一緒に帰ってるのに?」
確かにそうだけど、それは家が近いし帰る時間も同じだから一緒に帰ってしまうだけ。辛いけれどそう答えました。
「ふぅん。ならいいや。」
興味なさげにあの子の友達は僕の元を離れていきました。

もしかしたら、端から見たら僕らは付き合っているのように見えるのか?
もしそうであれば、ほんの少し幸せでしだ。たとえ違うとしても、僕と彼女が一緒に居るように思うのは幸せでした。

あれやこれやあって、3月になりました。卒業式も無事に終え、春休みを満喫していたときの事です。
不意に携帯が鳴りました。相手は同じ部活で部長で僕の気持ちを理解し、応援してくれている人物でした。
メールの中身をみると「ホワイトデー忘れてないよな?」
勿論、忘れるわけがない。だってその日は堂々と彼女に会える日だから。そう返信すると、すぐまた彼からメールが来ました。
「その日に告白しろ!」と。
まさに鳩に豆鉄砲。ビックリして僕は持っていた携帯を落としそうでした。
メールの本文には続きがあり、こう書いてありました。
「お前ら高校別だろ?会えなくなるじゃん。そんなのお前は辛いだろ?高校でも会えて、側に居て欲しいだろ?だったら頑張れよ。」
僕は素敵な友人を持てたようです。
だからたった一言だけ返信しました。

「がんばるよ。」


そして14日。
冒頭に至るわけです。
彼女は目を見開いて顔を赤くしています。ビックリしたでしょう。
だって彼女から見たら親友からの告白ですから。
少ししてやっと言葉が帰ってきました。

「あたしは、付き合えない。」

ああ、このとき僕の初恋は終わりました。後悔は全くありません。むしろ清々しい気持ちです。
ホワイトデーの飴も渡したことですし、さっさと帰ろうとしました。
しかし、彼女が待って!と叫びました。なにを待つのだろう。
僕はもう帰りたいのに。
だってこれ以上ここにいたら、泣いてしまいそうだから。

「断ったのは、嫌いだからじゃないよ。むしろあたしはあなたのこと好きだよ。でもね、それは"友達"としてのあなたを。そんなの、あなたに失礼でしょ。あたしの気持ちがあなたにちゃんと向いてないのに付き合うなんて、そんなの駄目。あなたに失礼。だからゴメンね。」

ああ、本当にこの子は好きになったときから変わらない。
なんだかんだ言いつつも、僕のことを思っての言葉。
それがわかってるから、辛い。
僕はただ、うん。と答えてその場から離れました。

家につき、自分の部屋に入ったとたん涙が溢れてきました。こんなに泣いたのは久しぶりです。

例え、フラれることを覚悟していても悲しいものは悲しい。
苦しいものは苦しい。
辛いものは辛い。


それでも、諦めることが出来ない自分がいます。
今でも、降られてもなお、彼女を好きな自分がいます。
しつこい男かもしれません。
こんなんじゃ、彼女に嫌われてしまいます。それでも、諦めれません。
思えば思うほど泣けてきました。


ようやく、落ち着いた頃、一件のメールがありました。
相手はあの部長です。 「どうだった?」とひとこと。

なので、自分もひとことで返しました。

「諦めれない」

頭の良い彼はきっと気づくことでしょう。僕が降られたことに。

彼女は「友達としては好き」と言っていました。もしかしたら、今回の告白をきっかけに、僕のことを少しは気にかけてくれるかもしれません。
その事に、望みをかけて僕は思い続けるのです。


それでも君が好きだよ、と。




-End-

 

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