ミモザアカシア
「ありがとう」
そう言い切って、彼女は飛行機のホームに向かって歩き出し、人だかりに飲まれていった。
叶えたい夢を胸に秘め、困難を覚悟し、苦しい気持ちを振り切って、片手にキャリーケース、もう片方の肩には大きなギター、そして胸には夢を詰めて振り返らずに進んでいった。
これでよかった、これがよかった。
彼女の夢で、彼女の夢は私の夢で、変わらずに見てきた夢を曲げることも妥協する事もしないで、ようやっと認められて、大きな一歩を踏み出した。
これでいいに決まってる。
たとえ、わたしが苦しくても、彼女が少しでも頑張れるなら我慢する。
きっと彼女は私以上に苦しくて、重くて、悲しくて、切なくて、やるせなくて、どうしようもなくて、そんな、そんな感情と折り合いをつけて生きていく。
だから、応援するって、だれよりも応援するって決めた。
彼女を乗せた飛行機は、青い空に映えてまっすぐ線を描いて空に向かっていった。
もう、ここなら大丈夫
私は強いから
だって、あなたが強いんだもの
私だって強い
だけどね、最後でいいから
わがまま言わせてください
「行かないでよぉ…バカァァ…!!」
一人ぼっちは、涙が出ないくらい、寂しいのです。
-End-
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