仮間輝×阿部真人
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六月某日、人生何回目かの体育祭は猛暑の中行われた。六月なのにこの暑さ、嫌でも地球温暖化について考えてしまう。
「あっつーい…」
「動いてないくせに何言ってんだ」
日陰の少し大きな石の上に座って涼んでいたら、後ろからサトが来た。最近のこいつ俺によく関わってくるんだよね、真人との邪魔もしてくるし。
「それはサトもデショ」
「お前よりは動いてる」
「それより…」
チラッと校庭の方を見るとクラス競技であるサッカーに参加しようと、ボールと戯れている真人を見る。
普段やる気ないくせに、スポーツ好きで誰よりもこの体育祭を楽しみにしてきた。もちろん、俺や仲のいい人にしか言ってないけど、先生とかにはいつも通りのやる気ない真人で通そうとしてるけど。ワクワクしてるのがダダ漏れ。可愛いなぁ。
「こうして見ると、真人ってかわいいよねー」
にやにや茶々を入れるようにサトがからかってくる。喧嘩売ってるのかなぁ
「今更何言ってるの?それに、真人は俺のだからね」
「はいはい、惚気ね。ゴチソウサマ」
「めんどくさいなら茶々入れなきゃいいのに、サトって暇なの?」
「輝は俺に喧嘩売ってるの?」
「先に売ったのはそっちデショー」
ほんと、最近のサトはよく絡んでくる。
俺と真人と関係を打ち明けたときも、前と変わらない普通の関係だった。普通の友達みたいで真人はそれが凄く嬉しかったみたい。まぁ、そうだよね。
なのに、最近じゃすぐそばにくるし、真人の隣キープするし、授業中も隣同士なのをいい事にちょっかいかけるし!この前なんて腰触られてた!あれには嫉妬しっとするよ!
真人と決めたルール、というよりは真咲からのお願いで、『学校では極力距離を置く事にする』と言ってきた。距離が近くなると我慢できなくなる、なんて可愛いことを言ってきたから、我慢する。
それを知って知らずか、本当に絡んできて腹が立つ。真人もサトには油断してるから、いつでもハラハラする。
ピーッ!
試合をはじめるホイッスルが響く。
真人を見ようと立ち上がる。サトが鼻で笑ったように見えたけど、もう気にしない。こんな時ぐらいしか恋人同士みたいな事できないんだから。応援したいって思うのは好きだから。
「ひっか!!」
真人が大きな声で俺を呼ぶ。その声は心底楽しそうで、顔を見なくても笑顔なのが分かる。
「見てろよ!絶対シュート決めっから!」
その顔は、本当に楽しそうで、好きって気持ちが倍増した。
ホモとか言われたり、キモチワルイって目をされたりしても、好きなものは好きなんだ。変かな?この気持ちは。でも、嘘じゃないから。
試合は五分五分。
最後のPK戦まで持ってきた。
真人のシュートに託された。
大きく息を吸い、ゆっくり吐く。
緊張が伝わってくる。
そうして打ったボールは、吸い込まれるように、キーパーもギリギリのところでネットに入った。
本当に、ゴールを決めたんだ。
「うわぁぁ!!!」
「真人すげぇぇー!!!」
「やったぁーー!!」
周りの声援を一身に受け、勝敗を分けたゴールを喜ぶ。
本当に決めた嬉しさと、そんな嬉しそうな真咲を見る愛おしさ、自然と俺も笑顔になれる。サトはさっさとコートの中の真人の元へ走っていった。もちろん俺も行きたかったけど、なんとなく分かってる。
真人から来るって。
「ひっか!」
「真人、」
「おめでとう」の言葉より早く抱きついて来た。首に手を回し、ギュッと力強く抱きついて来た。
「やった!やった!ゴール決めた!」
周りの目なんか全く気にしないで、喜びを誰よりも先に伝えてきた。それが分かって嬉しくて嬉しくて、俺からも抱きしめた。
スポーツで抱きしめるなんてよくあることで、みんな気にしてなかったし、俺も少し真人不足だったから、今日はいいやと思って強く、強く、抱きしめる。
「おめでと真人、かっこよかったよ。」
「おうっ!」
抱きしめて、ふと思った。
周りはどうかなって、俺は大丈夫だけど愛しい人は快くは思わないハズ。
だけど、この腕の中にいる真人はそんなこと考えてない。
きっと、一番嬉しいことを一番好きな人へ伝えたかったんだと思う。うぬぼれてる?なんとでも言えばいいよ、だって俺も同じ立場なら同じようにするもん。
とりあえず、今日の帰りは思いっきり褒めて、思いっきり甘やかして、キスしようか。
いつもは照れて言わない好きって、絶対言わせるからね、真人。
-End-