町田辰徳→矢巾心弥



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俺はごくごく普通の高校野球男児だと自分でも思う。普通の偏差値の学校で、弱くも強くもない野球部員で、少し赤点の多いテスト結果で、運動神経もそこそこ、同じクラスの可愛い子にキュンとしたり。普通のなんの取り留めのないような生活。
の、ハズだった。

なのに

「タツー部活いくぞ」

幼なじみ(男)を好きになりました。



事の発端、初恋のキッカケ。そんなもの覚えてない。
気がついたら目で追ってる、どうでもいい会話が嬉しい、誰かと居るのかと考えてしまう。この事をクラスメイトの龍太郎に言ったら「恋だ!そいつァ恋だ!」とはやし立てられたのは記憶が新しい。また同じクラスの真人に聞いても「ついにお前にも春が来たか脳筋」とも言われた。

(んな事ねぇと、思ってたンだけどな)

大嫌いな数学の時間、頭の中はその事しか考えてなかった。
教師の呪文のような解説を聞き流し、隣の席をチラッと見る。同じように聞き流してるアイツ、そう片思いの相手になってしまった幼なじみ心弥がいる。眠くなってきたのか、落ちてくる瞼をコシコシと手の甲で擦り、なんとか眠気と戦ってる。
可愛いなんて思う。もしかしたら、想像以上に俺は末期なのかもしれないな。

「タツ、タツ。」
「んー?」

小声で話しかけてくれる、前まで当たり前だったこの行動すら嬉しい。

「次の体育なにする?どうせ暇だべ?」
「っつてもなぁ」
「しりとりすっぺ、しりとり」
「それ今でもできんべ」

なんて、本当にどうでもいい話なのに、すげぇ心が跳ねる。
自覚してからは本当に、嬉しいのに苦しい日々が続く。
さすがに平凡な日常を送ってきた高校男児に告白なんて、しかも同性の幼なじみにする勇気はない。だから、なんのしがらみもなく話せる嬉しさと、好きと言う気持ちを隠さなきゃいけない苦しさ。そんな状況に板挟みされてる。
教師の説明の最中にチャイムが鳴る、中途半端な気もするが、そもそも聞いていないのでどうでもいい。教室から教師が出る前に心弥が寄ってきた。

「着替えにいこーぜ」

人懐っこい笑顔で俺を誘う。
その表情が、その屈託ない笑顔が好きなんだ。
今はまだ、この現状に甘えてていいかな?

「行こっか」

いつもより軽い足取りで更衣室に向かう。

今日はいつもより笑顔が見れるといいな。




-End-

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