花の話

坂口サトのひとり言


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花をもらった。
ペンタスという花で、咲けばピンク色の小さな花をいくつも咲かせるらしい。
正直、要らないと思った。ほっといて勝手に育つ花でもないし、水やりや日を当てなきゃいけないなど手間が掛かってめんどくさいことこの上ない。なんでもらったのか今でも分からない、でも俺に渡した時の教師の顔は清々しい顔をしていやがったのは覚えてる。

夏休み中、補習のあとにもらったその花は、持って帰るのすら億劫でずっと放置していた。休みがあけたらきっと枯れていてもう手も付けられないから諦めて土に返すだろう。そう思って日の当たらない場所に置いて休みを満喫した。

なのに、まだその花は枯れていなかった。
水も日も与えなかったのに、乾いた土に花は咲いていなかったが、葉は青々としていた。

「おー枯れてないじゃん」
「どうすんだよほっとく?」
「へぇ植物って生命力あるんだ」
「かわいそーじゃん?このままとか」
「いんじゃね?ほっといても」
「ほっときゃ枯れるべ」

いろんな声、いろんな意見、いろんな反応。
でも、結局は決めるのは俺だし話を聞く気はあんまりない。

「あら、まだ枯れてなかった。よかったあ」

そう言ったのは担任だった。おばあちゃん先生と言われるのが相応しい歳のいったばあちゃんでいつも笑っている先生だ。

「生き物ってすごいわねぇ、自分で育つ力があって、花や実はつかなくても生きる気力だけはちゃーんとあるのねぇ、よかったよかった。そうそう、これは貴方が頂いたお花なんだから自分で育てなさいよ、育てないなら持ち帰るか丁重にお返ししなさいね」

”よかった”そう言ったのは担任ただ一人で、何故かそれがこそばゆく感じた。でもそれは、嫌な感じは何もなく知らない感情が心に広がった。

「チッ、しゃーねぇな」

元気のない鉢を手に取り、水をあげに水道に向かう。らしくないのは分かってる。こんなめんどくさいの心の底から嫌だし、三日坊主常習犯の俺だから今度こそ枯らすかもしれない。

でも、たった一言「よかった」そう言ってた。それがひっかかったから、やるだけ。

「水ってどれくらいがいいのかなー」

とりあえず、花が咲くまでは育ててやるか。



-End-


おまけ

「ふふっ」

「おや先生楽しそうですねぇ何かあったんですか?」

「あら校長先生、いや実は私のクラスの子が育てている花がようやく咲いて」

「それは嬉しいですねぇ、なんて花なんです?」

「ペンタスという小さな花です。星型に五つの花弁をつけて咲くんですよ、あの子が育てた花は白い花を咲かせました」

「それはさぞ可愛らしいでしょうね」

「ええ、それに花言葉が鮮やかな行動というのがあるんですよ、彼は一度育てることをやめてましたが、ある日から私にどう育てたらいいか聞いてくるまでになりました、なんだか健気で」

「なるほど、彼に当てはまるということですな、やめたのにまだ続けるあたり愛されることをちゃんと知っている子なんでしょうな」

「本当に、素敵な子です」



-End-

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