カラッとした晴天に見舞われて、露出された肩口も腕も鼻の頭もジリジリ焦がす日中だからトーゼン何時もは自室で買い溜めた本を読み漁る。ケド、そーじゃないのはたんなる気分。慣れていたうるせぇ刃友がここぞとばかりに余計に暴れるのも理由のウチ。お引越ししたばかりのココは、新米共の良くわかンねぇ団体さんばかりで、ショージキどうでもいい。(面白ソーだからコッチを選んで、だからってコイツ等に協力するなんて以ての外)
鳴り止まない耳障りな蝉の鳴き声のような奴らのヤり方に共感はなくて、ただケンカって感じのマジな闘争心は嫌いじゃない。

そんな大地寮に入っちまったのは、やっぱり納得はしてて後悔なンてなくて、逆に正解だとも思っている。それでも天地寮は何時だってぬるま湯みたいでアホとバカの塊のようで、ナンツーカ…


「安心すンだよな」
「私の太ももそんなに好き?」

アー。声に出してしまったのは油断した。

「まー、モチモチしてて悪くわないな」
「太ってるって言いたいの?」
「イイ感じの太ももッすよ」
「誰と比べてるのかしらね」

不敵に笑みを深めて言葉遊びを楽しむ。決して取るに足らない事ではない。普段通りに、暫く振りにゆっくりとした時間を楽しむ十分すぎる程有意義なもの。擽ったいような嬉しいような、稚拙なんてそんな感覚は遠いような気がした。

「好きだわ」
「太ももが?」
「太ももが」
「あら、少し残念」

細く長い指先を髪に巻き付けて遊ぶ。クルッと一回、そのまま流すように解いてはもう一回。満足したように今度は頭ごと上から下へと掌を滑らせて、子どもをあやすように撫でた。

心地良い。というより、キモチィー。

若干煩い外からの騒ぎ声は、やっぱり遮断出来ねェけど、それも何処か遠く。現実離れしたような感覚とそれでも引き離せない日常が重なってゆらゆら流れる。


うつらうつら
成り掛けては留まって…


一緒の空間で甘えたい時に甘やかしてくれる祈がいる。

なんつーの。コレ…。あー、なんか凄い



「……スキなんだよなァ」



ピタリ、と撫でる手が止む。それも一瞬で、祈の驚く顔も一瞬だった。また直ぐに笑みが垣間見える。

「どうしたの?」
「んァ?ぁあー、手も好きだなぁ〜ッて」
「フェチが多いこと」
「ソーカモ」

どさくさに紛れて太ももを人撫でしたら、咎めるように頭を叩かれた。オイ、イテェ。と上げた声とは裏腹に痛みはなくて、少しだけ嬉しさが湧き出た。止める事はなくて、ただ単純に肌触りを楽しむ為のもの。スベスベで白い肌は、面白いぐらいに手に付いて勿体無い。

「本当に好きね」
「ン。大好きだ。好物みてェなもン」
「いやらしい」
「祈限定だッつーの」

お腹の方へ寝返りを打って、ギュッと抱きつけば、また降る優しい手が待っている。押し付けるように額をグリグリすると擽ったいのか、よじってクスクス笑った。

「お腹も好きなの?」
「祈だったら全部好き」
「…」
「アー、シアワセ」

祈の呼吸がピタリ止まる。それも大袈裟だけど、止まったように静かになった。頭に置かれた手を握って、指先を撫でる。指と指の間に自信の指を入れて、手を弄んだ。

キモチィ。ナニ、これ。すげーイイ。

久々だからか、こんなシュチュエーションだからなのか。事に運ぶにはまだ惜しくて、こういうのもいいと思う。


「祈…キモチィ」

そう言って、今度は顔を天井の方へ。しかし、天井よりも先に眼前の綺麗な顔が視界いっぱいに入る。そして、チョット後悔。

「なんつーぅ、顔してンの」
「だって……。」

祈の手を握ったその手は自分の腹の上へ。それともう一方の手でその頬を撫でた。少し熱いような。其処を辿って熱っぽい瞳の直ぐ下を親指で辿る。

「カワイイ」
「ちょっとッ…本当にどうしたのよッ…」

うるせェなぁ。たまにはイイじゃン。そう言いたい時もあンだよ。

それは言葉に出ずに堕落する。野暮ってもンよ。


「祈、愛してるッて言ったら信じるか?」
「信じるもなにも、行動で示されてるわよ」

…バカ。

と小さく出た悪態に顔が緩む。普段口にしないから、たまに抑えられない溢れる暖かさが今出ただけのこと。

そんでもって、こんなに顕著に顔に出る祈も何時もと違くて新鮮。見つめあっていれば、耐えられないとばかりに顔が近付いた。そっと、唇が押し当てられる。嗜むッーより、楽しむ感じの子供っぽい口付け。離れれば照れたように笑うからヤられちまう。

優しい手も、瞳も、温い唇も、全部コッチに向いている。そう思うと我慢も限界。もう一度近付く顔に、距離を縮めたのコッチ。逃さないように後頭部に手を添えて、腰を引き寄せれば、唇を割った悪い舌を差し込んだ。


ゆっくりな時間が終わる。今度は深く深く落ちて行け。





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