「ナキーっ!!ほら見ろっ!!今日、こじゅうろから習った漢字だ!かんじーっ!!」

『わーさすが梵。漢字さんたくさん知ってるね、偉い偉いっ』

「ナキどのーっ!!見てくだされ!さすけでござるっ!!」

『あ、似顔絵?佐助くんにそっくりだね、弁丸くん。今度は私も描いて欲しいな』

「ナキっ!!見てくれっ!!団子だっ!!」

『おぅふ、泥団子さんかい竹千代くん。本物だったらお腹いっぱいだね』

「ナキ!てれびで童謡とやらを聞いた!私も歌えるようになったぞ、せーのっ…」

『がっはっ!!待って佐吉くん!君がお歌を歌い始めたら私がしぬ!萌えしぬ!』

「…そう言うわりには今日も楽しそうだね、お姉ちゃん」

『今日も今日とて子供たちが可愛すぎてつらいっ!!』




苦笑いする弥三郎くんに親指を立てつつ、相も変わらず可愛すぎる我が息子四人に悶える休日の午後

平日はあまり構ってあげられないから、昼食後はいつも私に押し寄せてくる梵と弁丸くん、そして竹千代くんと佐吉くん


この愛しい子たちを抱き締めるには腕二本じゃ足りないね。四本欲しかったね。そう言ったら想像したのか、弥三郎くんが真っ青になったよごめんね




「ナキの腕が増えなくても、オレらがだきついてやるよ!ほら、ぎゅーっだっ!!」

「ぎゅーっだなっ!!」

「ぎゅーっでござるっ!!」

「……ぎゅーっ」

『がはっ!!!』

「わーっ!!?やめてあげてっ!!お姉ちゃんが、えっと、萌えしんじゃうから!せめて一人ずつ順番にねっ」




弥三郎くんがそう言えば、素直に私から離れていくチビッコたち

君たちの可愛さを受け止めきれない私でごめんね…でも一人ずつなら全力で受け止めるよ!





「よし!じゃあオレからだな!」

「待て、貴様はいつも一番ではないか。たまには最後に回れ」

「なんだとっ!?そう言う佐吉は、いつも一番長くだきついてるじゃねぇかっ」

「そうだそうだ!でもワシも、たまには一番がいい!」

「たけちよどのは、だきついている間にねむってしまうゆえ…それがしも一番がいいでござる!」

「弁丸は一番下だからダメだ」

「ダメだなー」

「ぅうぅ…」

『おぅふ…えっと、順番に平等に抱き締めるのじゃダメかな?みんな全力で愛でられる自信はあるよ』

「「「「ダメっ!!!」」」」





ま、まさか、これが反抗期…!

声を揃えて否定してくる子供たちに、嬉しいような悲しいような。いわば取り合い、という行為に複雑な心境である





『私のために争わないで、という台詞をまさかこの時に使うことになるとは…!』

「台詞は使わなくていいから止めて!ほら、じゃんけんとかで決めようよ。恨みっこなしで、ね?ね?」

「男にはゆずっちゃならねぇ勝負がある!て、こじゅうろも言ってたぞ!」

「それが今っ!!ゆえに口出しむようでござるっ!!」

「貴様もナキとぎゅーっとしたいならば、正々堂々私たちと勝負しろ弥三郎!」

「ワシも受けてたつぞ弥三郎っ!!さあこいっ!!」

「ち、違うってばっ!!俺は別に、違って、ぅうっ…!」

『ちょ、弥三郎くんが泣いちゃってどうすんの!』




…思いの外、この件は子供たちにとって真剣勝負らしい

参戦する前に戦線離脱した弥三郎くんを後目に、四人は誰が一番に私へ抱きつくのか。それを決めようとしている

いや、荒っぽいのはさすがに無しだよ!小さくとも武将の子、力は強いんだ、怪我をするかもしれないじゃないか




「じゃあナキが決めてくれよっ!!」

『へ?』

「うむっ!!ナキどの!順番を決めてくだされっ」

「ナキが決めた順ならば異論はない」

『え、えっと…私が、順番、決めたらいいの?そう言われてもなぁ、あっは…』

「じゃあ一番だけ決めてくれっ」

『…一番?』

「ナキっ!!」




私の前に飛び出してきた竹千代くんが、何の裏もない無垢な瞳で顔を覗き込んでくる

そして問うてきた。一番…一番…あ、これは、嫌な予感が−…






「このなかで誰が一番好き?」

『………………』

「………………」

「………………」

「………………」

『………………』





・・・・・・・・。






『…弥三郎くん、』

「へ?」

『介錯をお願い』

「介錯……えっ、介錯っ!!?は、早まらないでお姉ちゃんっ!!」

『止めないでっ!!この子たちの中から一番を選ぶ?そうなったら私は、潔く腹を切る方がましだよっ!!』

「切らなくていいよっ!!?お姉ちゃんにとっては大変な事態かもしれないけどそんな場面じゃないからねっ!!」




今にも台所から包丁を取り、腹をかっ捌こうとする勢いの私を慌てて止める弥三郎くん、いや止めてくれるな

この中から一番を決めるということは、他の三人を捨てるということ…そんなことできない。だって私は、みんなが大好きなんだ




『がはっ…』

「お、おいっ!!ナキがつらそうだぞっ!!」

「貴様が妙な質問をするからだ竹千代っ!!」

「ワシかっ!?すまんナキっ!!ワシが悪かったーっ!!」

「ナキどのーっ!!しなないでくだされーっ!!」

『ぅう…じゃ、じゃあ、みんな一緒でいい?』

「あ、ああっ!!ほら佐吉っ!!今日は一番ゆずってやるよ!」

「何を言うっ!!今日は一番年下からだ、行け弁丸っ!!」

「そ、それがしガマンできるゆえっ!!たけちよどのからっ!!」

「ワシだってガマンなら得意だ!いつもどおり、梵天丸からいけっ!!」

『ぐぐっ…譲り合いの成心可愛すぎかっ…よし分かったっ!!』




私のピンチに気づいた子供たちが、わたわたと慌てながら譲り合いを始めてくれる

ああ、もう、君らのそういうところも可愛いんだよ!だったら私も母親代理として覚悟を決めようじゃないか




『君らの中で一番を選ぶくらいなら、四人一斉に相手をして討ちじにした方が何千倍もマシだよ!』

「お姉ちゃん無茶だよっ!!いくらお姉ちゃんでも全力の四人を受け止めるなんて…!」

『ふっ…ここで受け止めなきゃ女じゃないっ!!さぁこ−…』

「ナキーっ!!」

「ナキっ!!」

「ナキどのーっ!!」

「ナキっ」

『ごふっ!!?』

「お姉ちゃぁあんっ!!?」




身構える間もなく、仲良く同時にタックルをかましてきたチビッコたち

それを受け止め…きれるわけもなく、私は後ろに吹っ飛んでいった


いや、気持ちは受け止めたよ。ただ未来の武将四人の体当たりは無理だった




「ナキっ!!ぎゅーっだっ!!」

「ぎゅーっだなっ!!」

「ぎゅーっでござるっ!!」

「…ぎゅーっ」

『がはっ…死因としては、最高の、しに方だね…ぐえっ』

「お姉ちゃーんっ!!!?」





子供たちの温もりと気道の圧迫を感じつつ、だんだん遠くなっていく楽しそうな笑い声をかすかに聞き…ああ、やっぱり、幸せだなって

君たちの中に一番なんていないから。ずっとずっとみんなが、私の、最愛だから


君らが競う必要ないくらい、みんなにたくさんの愛を注いでみせようか





20161018.
「このなかで誰が一番好き?」

チビッコたちから迫られる究極の選択!佐吉くんがお歌を歌い始めたらしねる自信があります((

三成外伝ください…


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