四つ葉のクローバー見つけた






「よいかクロバ、毛利の男子たるもの三倍返しなど生ぬるい。他に劣るなどありえぬ」

『はい、父上。見ていてください、ボクの市おねえさんへのアイは長政おじさんにもまけません』

「クロバ様、人妻へのホワイトデーは少し慎重になりましょうね」

「よかろうクロバ、好いた女ならば奪ってみせよ」

「元就様も息子に何そそのかしているのですかっ!!?」




男の器が試される愛の三倍返し、ホワイトデー

それを間近に控えた我々男衆…元就様とご子息のクロバ様、そして彼らの家族である私は三倍返しの作戦会議を始めている


贈る相手はもちろん、奥様のいろは様とご息女のヨツバ様です




『…トラも母上やヨツバから、バレンタインをもらったのですか?』

「へ?はい、もちろ−…」

「………………」

「も、もも元就様の10分の1くらいの大きさでしたけどねーっ!!あははははっ!!で、ですよねクロバ様っ!?」

『はい…ヨツバは蘭丸おにいさんに、その倍のチョコを贈っていましたが』

「・・・・・・」

「ご安心ください元就様っ!!あの小僧からの三倍返しは必ずや阻止してみせますっ」

「ふむ…あの餓鬼よりも貴様は、変態部長がいろはとヨツバに近づかぬよう動け」

「………御意」




…まるで戦国の世に戻ったかのごとく、膝をつき命を受ける私をクロバ様が不思議そうに見つめる

あの変態…失敬、明智殿がホワイトデーを忘れるはずがない。いろは様からのチョコは義理であると、改めて言い聞かせて参ります


そしてホワイトデーは−…




『……トラ、』

「っ……も、元就様!私は別件の準備に向かいます」

「あの男は任せた。貴様がしくじれば我が直々に手を下すがな」

「は、はい!」




クロバ様の目配せをきっかけに、私はお二人を残し部屋を出て行く

その去り際、私の顔を見て僅かに悪戯っぽく微笑んだクロバ様は…ああ、母上にそっくりですね

















『あ、餌の人!どう?元就くんにばれずに出てこれた?』

「もちろんです!いやこれも、クロバ様の名演技があってこそですが」

『クロバはポーカーフェイスゆえ!エサはすぐ顔に出るがな』

「う゛…仰る通りですヨツバ様」

『クロバくんはちゃっかりしてるからねー、誰に似たんだろ』

「…元就様といろは様のどちらにも似たのだと思います」




トントンと部屋の扉が叩かれ、忍者のごとく静かに入ってきた男…我らが家族、餌の人

それを可愛い娘、ヨツバちゃんと一緒に迎える。間者を任せた彼から聞くのは旦那様の今の様子だ、何故なら−…






『よし、じゃあ改めて。元就くんのお誕生日会議始めまーす』




もうすぐ元就くんのお誕生日だから





『餌の人、餌の人、男って何をもらえば嬉しいのかな?』

「えーっと…安直ながら、お二人からの贈り物ならば何でも嬉しいのではないかと」

『…ヨツバちゃん、』

『うむ、回答としては30点よな』

「厳しいっ!!し、しかし事実は事実なのです」

『そこをひねり出すのがエサの役目ではないか!使えぬコマよっ』

「ぅう゛…!」

『ヨツバちゃんは年々パパに似てくるよね。でも確かに元就くんの好みって分かりづらいか、私も分からない』

『蘭丸の好みならば余は分かるぞ母上!』

『うん、それはパパには内緒だよヨツバちゃん』




ほら餌の人も複雑そうな顔しないの。このお誕生日の影に隠れ、ヨツバちゃんには蘭丸くんからのお返しをちゃんともらってもらおう

でも大丈夫。今のところ本命はパパだもんね




『余の本命は父上ではない』

『おぅふヨツバちゃん、反抗期にはまだ早いかな。たぶんパパは気にするタイプだよ』

『父上の本命は母上ゆえ!余もクロバもじゃまはせぬ』

『………………』

「ふふっ、娘にそう言われては返す言葉もありませんか」

『うるさいぞコノヤロー。君は早くプレゼントの案を考えなさい』

「ふ、ふふふっ、はいはい。いろは様の仰せのままに」

『…母上、トラはなぜ笑っている?』

『ぐぐっ…!気にしなくていいよヨツバちゃん。大人の事情だからね』




でもやっぱり、彼の言う通り言い返せないんだよね


もちろんみんな、元就くんのことは大好きだ。ヨツバちゃんもクロバくんも、餌の人も

私たちは家族である。でもその前に私は…彼にとって一番の“女”でありたいじゃないか






『…ああ、ダメだね。悩んだところで出てくる気がしないや、去年はネクタイだっけ?』

『余とクロバで選んだ柄ゆえ、忘れておらぬっ』

「では財布かカードケースか…一通り調べてみましょう」

『あ、お願い。私とヨツバちゃんはお誕生日ケーキ作り始めるね』

「…やはりいろは様がお決めになった方がよろしいかと。ケーキは私にお任せください」

『…うん、よろしく。じゃあヨツバちゃん、パパのプレゼント選ぼうね』

『うむ!こっちのサイフ、母上の使っているものに近いゆえ…』

『あ、ほんとだ。でもこっちの鞄とかも…』




まずはネット検索でパパに似合うものを探していく

二人がもう少し大きくなったら、プレゼントは別々に選ぶことにしよう。今は家族で一緒に贈るんだ




『あはー、パパは家族で一緒なの、好きだもんね』

『む…だが中でも一番は母上ゆえ安心するといい!』

『…ヨツバちゃんのそういうおませさんなとこ、ほんと私に似なかったんだね。でもありがと』

『余は蘭丸の一番になる!』

『おぅふ、そっか、ママは応援するけどパパは…いや、大丈夫か』





家族が増えるのはいいことだもん






20160313.
出会って生まれて、お別れするその日まで繰り返すバースデー

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