You Copy?
『よし、小太郎くん!今日は風呂場の掃除だよ』
「………(コクッ)」
『小太郎くんはまず窓をお願いね。私は浴槽を…あ』
「……?」
『残り湯は洗濯に使い回せるよね、じゃあ先にこっちを抜いてから…』
「………」
『…小太郎くん?』
「っ……!!?」
『え、ちょ、きゃあっ!!?』
「ギョェェエェっ!!!?」
バッシャン!!!
………………。
「老いぼれが…貴様、雪子様に何をしたぁぁあぁっ!!!?」
「な、なな何もしておらんっ!!!そんなことよりここは何処ぢゃっ!!?」
「そんなこと…だと…!?」
「ひぃぃぃぃっ!!!?」
『こら、三成っ!!おじいちゃんを虐めちゃダメ!』
現在、我が家の居間でずぶ濡れのおじいちゃんが正座している。愛刀で床をカンカン叩きながら三成が尋問中
彼はそう、ついさっき“落ちてきた”戦国武将だ
「………」
『こ、小太郎くん、大丈夫?どこか打ったりしてない?』
「………(コクッ)」
おじいちゃんも例外じゃなく、水の入った浴槽に落下してきた
小太郎くんがかばってくれたお陰で私は平気だけど…彼はずぶ濡れ。頭を拭いてあげつつ視線をおじいちゃんに向けた
『あの…失礼ですが、どちら様ですか?』
「ん…なんぢゃ娘さん、この屋敷の…」
「北条です」
『北条っ!!!?』
おじいちゃんの言葉を遮って、三成が教えてくれたのはとんでもない名前だった
うわ、北条ってあの北条さんですか…あれ?
『風魔小太郎って確か北条家の忍じゃ…』
「………」
『…あのおじいちゃんが、主さん?』
「……………(コクッ)」
なんということだ。まさか小太郎くんの主さんまで来てしまうなんて
とりあえず未だに北条さんを威嚇する三成を下げて、改めて挨拶だ
『え、と…はじめまして。私、雪子って言います』
「雪子…よい名ぢゃのう。どこぞの凶王とはえらい違いぢゃ」
「・・・・」
「ひぃっ!!?」
『今はお宅の小太郎くんをお預かりしています。ほんと、彼にはお世話になってて』
「………(喜)」
北条さんの前に座った私の隣で、ちょこんと正座する小太郎くん
そんな私たちを見比べた彼はフムフムと頷き、次にコテンと首を傾げて…
「最近見かけんと思ったら…なんぢゃ風魔、嫁探しをしておったか」
「………(照)」
『えぇー…』
「貴様ぁ…やはり斬滅してくれる…!」
「待て三成よ、老人は大切にせよと教わらなかったか?」
「山に捨てろと刑部は言ったではないか!」
「…そうであったか?」
『ちょ、おじいちゃんは敬わなきゃダメよ!とりあえず北条さん、風邪引きますから着替えましょう?』
「おお、すまぬなぁ…う゛っ!!?」
『あ゛、こ、腰は大丈夫ですか?着替えは二階にあるので階段に気をつけてください。肩貸します』
「……………」
「ヒッ…雪子は弱い者に優しい女よ。分かっていたであろう?」
「…ああ、あれは雪子様がお優しいから…だが、気に食わない!」
「…ヒヒッ、嗚呼、われも急に腰が…」
「刑部…年寄りごっこは止めろ」
『はい、北条さん。お茶です』
「おお、よくできた娘さんぢゃ。いただこう」
『小太郎くん、何かお菓子持ってきてくれる?』
「…………」
私は北条さんを自分の部屋に招いて、この時代の説明をすることにした。みんながいる居間じゃ…うん、きっと北条さん攻撃されちゃう
小太郎くんに茶菓子をお願いするとサッと消えてしまった
『安いお茶しかなくてすみません』
「いやいや、気持ちだけで十分ぢゃ。しかし…この部屋は目がチカチカするのう」
『あは、現代の物は合いませんかね』
キョロキョロと周りを見渡す北条さん。驚きはしているものの、突然のタイムスリップに取り乱してはいない
さすがは歴戦を乗り越えてきた戦国武将だ
『ふふ、伝説の忍のご主人ですもんね。肝が据わってて当然です』
「お?今のはわしを褒めたんかの?それとも風魔か?」
『え?んー…両方ですね』
「そうか…そうか、そうかっ」
クシャッと笑う北条さんは、本当に気のいいおじいちゃんみたいで
嬉しそうなその表情に、私も思わず笑ってしまった
「む……」
『北条さん、どうかしましたか?』
「…実際のところ、風魔はどうかのう?」
『はい?』
「雪子さんにずいぶん気を許しておるようぢゃし…真剣な話、あそこまで寡黙な男は好かんか?」
『か、寡黙…』
小太郎くんのアレは寡黙なんてレベルじゃないと思うけど…嫌いだなんてありえない
内緒話をするようにヒソヒソと話す北条さん。ふと、扉の向こうに気配を感じた
『…………』
「…どうかの?」
『…ええ、小太郎くんはとっても素敵な男性ですよ!優しくて頼れるし』
「ほう!他には?」
『ふふ、たまに可愛くて…それに気分カードって紙で会話もしてくれます。私の贈ったそれをとても大事にしてくれてますよ』
私が小太郎くんのことを話すと、北条さんは楽しそうに目を細める
それはまるで息子…いや、孫を語るおじいちゃん。忍と主の関係ってもっとピリピリしてると思ったのに
『…ああ、もう!北条さんをめちゃめちゃおじいちゃん、て呼びたいです!』
「雪子さんのような孫娘なら大歓迎ぢゃ!それで、風魔の嫁に…」
ガチャッ
『あ、お帰り小太郎くん』
「おお、戻ったか風魔っ」
「…………」
北条さんの言葉を遮るように、小太郎くんがお菓子を持って戻ってきた
机にお菓子を置いたけど、それは少し乱暴で…私と北条さん、どちらにも顔を向けてくれない
だって小太郎くん、ずっと聞いてたもんね
「…………」
『お菓子持ってきてくれてありがとう、小太郎くん』
「ほれ、雪子さんが礼を言うておるぞ、返事をせんかっ」
「……………」
ムスッとそっぽを向いたままな彼に、何事かと首を傾げる北条さん
…ああ、照れちゃって
『可愛いね、小太郎くん』
「っ!!!?」
「…なんぢゃ、わしが口出しせずとも良い仲ではないか」
if.こんな日常はいかがです?
20121226.
キリ番200000双夢様
北条が来て風魔とヒロインと三人でほのぼの
思わず気配がもれちゃった小太郎くん←
mae tugi