You Copy?



『え、雨降ってる…』

「えぇっ!!?まじで、傘とか持ってきてないよ…」

『私も』



大学の廊下から前田と一緒に外を見ればパラパラ…じゃなくザーザーと、雨が容赦なく降り注いでいる

…天気予報の可愛いお姉さんは晴れだと言ってたのに



『…ビニールでもかぶって帰る?』

「はぁ!!?雪子、一応女だよな、せめてタケちゃんに電話して迎えに…」

『タケちゃんに借りを作るくらいならごみ袋かぶって帰るよ』

「…ほんと、雪子ってタケちゃん嫌いだよね」

『つい条件反射で…ん?』

「どうした?」

『…いや、おかしいな、見えちゃいけない人が見える』

「は?」



私の視線の先、雨が降りしきるなか私を睨み付ける傘が1つ

ええ、めちゃめちゃ睨んでます。もはや殺気です。つかどうしてこんな所に居るんですか






『な、何してるんですか元就さん…』

「…………」



傘の下から覗く綺麗なのに仏頂面な顔。その持ち主である元就さんに私は恐る恐る問いかけた

隣の前田もビビってる。そう言えば元就さんとは初対面だったね、私との関係を必死に考えてるようだ



『えっと、図書館に用事ですか?なら一緒に…』

「阿呆、それではないわ」

『へ?』



そう言ってぶっきらぼうに私に押し付けたもの。それはまぎれもなく私の傘だった

……状況が飲み込めません



「貴様、今朝は傘を持たずに飛び出したではないか」

『あ、はい。天気予報は晴れだったので』

「え?じゃあお兄さん、雪子を迎えに来たのかい?」

『………え?』



いや、まさか。私が傘を持ってないから元就さんはわざわざ迎えに?

前田の言葉に返事はないけれど、否定もしないから本当らしい。まさか元就さんが…!



『ま、まじオカン!』

「黙れ」

『痛いっ!相変わらずキレのいいチョップですね…』

「………」

『…ありがとうございます』

「ふんっ」



彼から傘を受け取り雨の中一歩を…踏み出す前に気づく

前田はどうするんだ、と



『前田…どうする?』

「へ?いや、どうするって言ってもなぁ…カバンだけは死守して走って帰るよ」

『いや、この雨じゃカバンを守れないよ…あ!じゃあ、これ貸してあげる』

「えぇっ!!?」



私は持っていた傘を前田に押し付けた

驚いてあたふたする彼。ピンクで小さな傘だけど、前田ひとりならなんとかなるはずだ



「いや、いいって!雪子はどうするんだよっ」

『元就さん、入れてください』

「は?」



元就さんの返事は待たず私は傘の下、彼の隣に入った。元就さんが持ってる傘は兄さんのだからね、ちょっと大きいんだ



「…我は貴様に持ってきた。この男のためではないわ」

「す、すんません…」

『まぁまぁ、帰りに夕飯の材料買っていきますから。元就さんの好きなものにしますよ?』

「………」



何か考える素振りを見せる元就さん…しばらくして顔をあげたかと思えば前田を睨み、直ぐに歩きだしてしまった

私も濡れないよう急いで追いかける



『明日、返してよね前田!じゃあねっ』

「お、おおっ」

「早くせぬか」

『はーいっ』

「返事を伸ばすでないわ」

『……はい』



「…だ、誰だよ今の…前に来てた白い兄さんといい、佐助さんといい…と言うかさっきの元就さん…!」



雪子と同棲してるっ!!?







『…ふふっ』

「急に笑いだすでない、気味が悪いわ」

『いや、だって嬉しいじゃないですか。元就さん迎えに来てくれるなんて、しかも相合い傘』

「?」



何のことだと首を傾げる元就さん。ああ、相合い傘の意味が解ってないんですね

きっと一つの傘に二人で入るなんてしたことないだろうし。相合い傘という概念がないのかも



『でも黙って来ましたよね?みんな探してるんじゃないですか?』

「我は知らぬ。だが面倒よ」

『?』

「雪子を迎えに行ったとなれば石田や真田、伊達あたりが喧しい。貴様が傘を忘れたせいぞ」

『え、酷い!責任転嫁ですかっ』

「ふんっ、我がわざわざ来てやったのだ。それくらい当然ぞ」

『…はい、そうですね!ありがとうございます』

「………」



素直に返事する私に怪訝な表情を浮かべる元就さん。ええ、素直に喜んでますよ

だってちゃんと傘を持ってくれてる。ときどき見上げて私に傾けてくれてる。車道側を歩いてくれてる



『無意識ですかね?元就さんってばジェントルマンです』

「じぇ…何ぞ?」

『政宗さんにでもきいてみてくださいっ』



クスクスと笑う私を睨み付ける。鋭い目がさらに険しくなるけれど、元就さんのそれは決して怖くはなかった





1206.
フリリクより
オカンな元就さん

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mae tugi

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