You Copy?
『ただいまぁ…』
誰もいない家に挨拶しても、当然返事はないけれど。帰りついた達成感だけで私は満足なんだ
「…………」
『…元親?』
「…よし、いねぇな誰も」
『あ…』
真っ先にサンダルを脱いだのは元親で、そのままお風呂場を覗き込み確認する。また誰か…落ちてきてないか
さすがは兄貴代理
「ちょっと、点数稼ぎとかズルくない?鬼の旦那」
「うるせぇ、んなんじゃねぇよっ」
「雪子様!二階は私が見て参りますっ」
『よ、よろしく…』
背負っていた大谷さんを降ろして、彼は二階に駆けあがった。あー…元気だなぁ
三成の背中を見送りながら、私たちは居間へと入っていく。まずは服の値札をのけて…次はお昼か
『あ、でも戦国時代って一日二食でしたっけ?』
「…こっちは違うのか?」
『私たちは三食です。でも朝も少し遅かったし…夕飯を早めにしますか』
布団が届いて部屋割りをして、そしたら材料を買いにいって…これからの計画を頭で考える
あ、そうだ夕飯の中身。真田君のチョコレートケーキってお願いはまた後日ってことになったから…
『…鍋とかが手っ取り早いけど、どうしよう』
「ヒヒッ…三成は決めかねておったからなぁ…何でもよかろう」
『何でもいいが一番困りますよ。買い物行ったときに決めますね』
パチリパチリと値札を切りながら話す。元就さんは早速テレビを見はじめて、真田君と伊達さん、大谷さんと元親もそれに便乗。大きな男たちがテレビに群がっていた
猿飛さんと片倉さんは、値札とりを手伝ってくれている
『ああ、そうだ。布団が届いたらピンポーンって呼び鈴が鳴ります。驚かないでくださいね』
「あは、うちの大将は知ってても飛び上がるだろうね、しばらく」
「おい真田、騒ぐんじゃねぇぞ」
「分かっております片倉殿っ!」
『…ほんとかな』
しばらくしたら三成も降りてきて、ほぼ同時にピンポーン。ああ、思ったより早かったな
そして呼び鈴の話を聞いていなかった三成…とやはり真田君の純情コンビが飛び上がる。ああ、もう可愛いな、くそっ
『じゃあ運びましょうか…あ、その前に部屋割りを決めなきゃ』
「もちろん政宗様はこの小十郎と同じ部屋ですぞ」
「…………」
「…ご不満が?」
「……いや、ねぇよ」
明らかに不満を表す間を作った伊達さん。しかしまぁ…もちろん我が家にそれほど部屋があるわけじゃなく
『二階の兄さんの部屋…と下の二部屋だけですね、布団が敷けるのは』
「ならいっそ、下の二部屋を一つにしたらどうだ?襖で仕切られてるだけだろ?」
『元親、ナイスアイデア!』
我が家の一階にある二部屋は襖で繋がっている。片方は洋間なので妙ではあるが…それを取り払えば一部屋扱いできるのだ
できれば大谷さんは一階の方が不自由ないだろうけど…三成と彼を他の人と同じにはできないだろう。大半は協調性の意味で
『真田君と猿飛さん、伊達さんと片倉さんは下で大丈夫ですよね』
「オレはかまわねぇよ、小十郎もだろ?」
「…武田の忍と同じ部屋は不本意なれば」
「俺様だってやだよ、姫さんの家じゃなきゃ旦那たちと…」
「佐助っ!!!」
「はいはい分かってるから…耳元で叫ばないでよ大将っ」
「喧嘩はするなよテメェら」
…この部屋の統率は元親に任せよう。そして一番問題なのは…
『…元就さんはどこ行きます?』
「…………」
『ああ、そんなに不快感を顔に出さなくても解ってますから』
先程から顔をしかめっぱなしな元就さん。三成と並び協調性のない人だ…素直な分、三成の方がマシかもしれない
この表情で騒がしい彼らを嫌悪しているのが理解できた
「…我はここでよい」
『ちょ、居間は無理ですって。逆に人の行き来があってうるさいですし…』
「毛利よ、われ等と同じ部屋でよかろう」
「…刑部、正気か?」
「われ等は同胞、なに、ぬしがよければの話よ」
大谷さんの提案に、やはり彼は拒否の構え。らちが明かないな…ええい、仕方ない
『じゃあ私の部屋に来ます?二人ですし』
「っ!!!!!!?」
「雪子様っ!!?」
「ちょ、姫さんなに言っちゃってんの解ってる!!?」
私の言葉にガッという勢いで視線が集まってきた。そして目を見開いていた元就さんの拳が次第に震えてくる
…もちろん、彼の答えは拒否
「き、さま…!!」
『(元就さん、紳士だからなぁ…)』
「っ−…!!」
「やれ、われを睨むでない。般若のごとき顔よ…恐ろしい、ヒヒッ」
「〜〜っ!!」
彼から返事は返ってこなかったが届いた布団を一組掴み、ダンダンと階段を踏み鳴らして二階へ行ってしまう
…兄さんの部屋へ行ったな
「…雪子、アンタ毛利の扱いが上手いな」
『伊達さん達より1日早く、元就さんには会ってますからね』
さぁ、布団を運びましょうか
mae tugi