You Copy?
『そうだ…三成と大谷さんは兄さんの部屋ですか?』
「ああ」
『じゃあ、ちょっと見てきま…』
「行くでないわ」
『えぇ−…』
炊飯器にセットして一息ついた私は、三成と大谷さんの様子を見に行くことにした…が元就さんに止められる
なんですかと首を傾げれば、彼はとても渋い顔をした
「奴等は湯あみの後よ」
『はぁ…』
「…………」
『…………あ』
そうか、お風呂に入ったから…きっと大谷さんは…
『じゃあ尚更行かなきゃダメじゃないですか!』
「は?」
『包帯を巻く手伝いしなきゃ、三成じゃ無理ですよっ』
「っ……おいっ」
元就さんが何か言おうとしていたけれど、私は急いで階段を上がり私の部屋の隣…兄さんの部屋へ向かう
何故か背後から舌打ちがしたけれど
「あの阿呆め…我の忠告を聞かぬとは」
『すみません、雪子です。大谷さんいますか?』
「雪子様っ!!?」
「止めよ三成」
「っ………」
ドアの前で声をかけたら三成の驚いた声がした。そして開けようとしてくれたようだけど…大谷さんに止められる
『あの…』
「ヒヒッ…しばし待て。嗚呼、朝餉と言うなら三成だけ連れて行けばよい」
「刑部っ!!!」
『あ…三成じゃ包帯巻く手伝い難しいですもんね』
「雪子様っ!!?」
「………」
『失礼します』
許可は出なかったけど私は兄さんの部屋に入った。三成の息をのむような音が聴こえ、部屋の真ん中には…
目を細めて私を見る、大谷さんがいた
『…私、手伝いますね』
「なっ−…!!いや、それは…」
『あ、ほら固結び!これじゃ解けなくなるでしょ?』
今回は仕方ないけど次からは気を付けよう。私は三成から包帯を奪うようにして、大谷さんの腕を…
『…触っても平気ですか?』
「っ−…!!」
「………ヒヒッ、どうであろうなぁ」
「刑部っ…!!」
『む…じゃあ平気なんだって受けとりますよ』
「っ!!!!!!」
「なっ−…!!?」
『え…?』
私の問いかけに悲しそうな顔をした三成。対する大谷さんははぐらかすような返事を返す
それを私は肯定ととった。だから腕をとったのに…今度はすごく驚いた二人
『?』
「っ……あ、雪子様…」
「…………」
『あれ?やっぱり痛かったですか?』
「は?」
『だから聞いたじゃないですか!触っても平気かって』
「あ、ああ…かような意味であったか…そうか、そうであったか…ヒヒッ」
『?』
今度はクツクツと笑いだした大谷さん。三成はホッとしたような泣きそうな顔。おいおい、忙しいな
私は首を傾げたけれど、ちゃっちゃと包帯を巻くことにした
「…………雪子よ」
『はい』
「ぬしは…われに触れることを躊躇せぬのか?」
『…………』
私は手を止め大谷さんを見上げる。見つめてくる彼の瞳は…白黒反転した、不思議な色だった
そして気付いた。私のさっきの質問は…捉え方によっては、彼に触れることを拒むようにも聞こえるんじゃないか
『…軽率でした』
「いや、よい、ヨイ。ぬしは今、われに触れておる。阿呆よ、アホウ」
『あは、元就さんにも言われました』
「ヒヒッ、ヒッ…ぬしは業病を知らぬ阿呆ではなかろう?生粋の阿呆か」
『えぇ−…そんなにアホアホ言わないでくださいよ。つか知ってますよ、ハンセン病でしょう?』
「……?」
私の記憶が正しければ…大谷吉継の病気はハンセン病。病に蝕まれ、色の変わった肌を見つめる。皮膚病だったか
『伝染の確率は低いので私のことは気にしないでください…あ、三成。そこの箱とって』
「は、はいっ」
「……」
『私、大学ってとこ通ってて…多少なり菌に詳しいんですよ』
医学部ってわけじゃない。だから彼を助けることも…治すこともできない
私は三成から裁縫箱を受け取り、中からハサミを取り出す。そして包帯を切り外れないように入れ込んだ
『生粋の阿呆で結構ですよ…よし、できた』
「申し訳ありません、雪子様の御手を煩わせてしまいっ…!」
『いいよいいよ、明日からは呼んでね。三成がなれるまでやってあげるから』
「雪子…ぬしはここの主であろう?なぜ女中のような真似をしよる」
『あははー…』
「ヒヒッ、まぁ好んでわれに触れる女中は居らなんだ…やはり阿呆か、ヒッヒヒッ!」
『ふふっ…あははっ!』
何故か笑いだす私たちをオロオロと見比べる三成。申し訳ない、大丈夫、正気だから
『ははっ…あ、そろそろご飯も炊けます。降りてきてくださいね』
「あい、わかった…行くか三成」
「あ、ああ」
二人が頷いたのを確認して私は部屋を出た
しかし…昔は差別が酷かったんだ、そう実感する。大谷さんの何を彼らは拒むんだろう。私が触れた肌は…
『大谷さん…温かかったのに』
「…刑部」
「?」
「やはりあの方は…秀吉さまの妹君だ」
「…………」
「刑部?」
「…なに、絹のような肌の娘と思うただけよ」
「なっ−…!!」
「ヒヒッ、ヒッ…!!人肌とは恋しいものよなぁ」
mae tugi