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「…………」




拝啓、わしの善意様

オロオロと今にも泣き出しそうな迷子の少女が目の前に居ます

果たして我が君の目に触れず、逃がしてやることはできるのでしょうか






『〜〜っ』

「…………、」



この近くでは見かけない顔の少女

誰かを探しているのか、彼女は異国かぶれな城下を行ったり来たりしては周りを見渡し、そして俯いていた

そんな姿を物陰から見守るわし。いや、だって驚かせて逃げられる自信しかない。我ながら強面の自覚はあるのだ



『……さん……くん…何処行っちゃったのかな…』

「っ…………」




いやしかし…このまま放置するわけにもいくまい

悲し気な声と儚さが新鮮だとか思ってないぞ奥よ。女子らしくていいなぁとか思ってないぞ



「ご、ゴホンッ!あー…もしもし、お嬢さん」

『え…』

「ああ、逃げなくていい。てまえ、決して怪しい者ではないゆえ」

『…………』

「…………」



…いや、普通は怪しむよな〜

何せ厳つい男が甲冑を着こんで町中を徘徊しているんだ。しかも町の外観もおかしい

我が君…と言うか軍全体の趣味を詰め込んだ装飾の数々。そりゃあ迷子になれば心細いだろう



『あ、の…この町の方ですか?』

「ええ、何かお困りですかな?」

『よかった!実は連れとはぐれてしまって』

「連れ…」

『全身が黒な赤髪の男の子と、全体的に黒と白が半々くらいの男の人を見かけませんでしたか?ちょっと変わった格好してるんですけど』

「…………」



そう言われても我が軍、格好がだいたい変だしなぁ

見分けがつかないほど連れ殿も妙なのか。いや、下手したら我が軍の餌食に…!



「あ、あり得ないことでもない!」

『はい?』

「っ―…!」




余所者だろうが何だろうが、奇妙な愛の道へと連れ込むのが我が君・宗麟様の御意向…勘弁してくれないかなぁ

いくら探しても見つからないならば、既に彼の魔の手に…!



『あ、すみませんお邪魔して。もう少し探してみます、あっちかなぁ…』

「っ、行ってはいけない!」

『はい?』

「…悪いことは言いません、貴女は早くここから立ち去るべきだ」



どう見ても少女は善良な旅人。今は亡き連れ殿に代わり、わしがこの子を送り出さねば!

妙な使命感やら罪悪感に苛まれるわしを不思議そうに見上げてくる。心細いでしょう…



『いや、確かに怪しい場所ですけど先に二人を…』

「連れ殿のことは諦めて欲しい、貴女が思う以上に恐ろしい場所なのです!」

『いやいや、ここにあの二人を残していく方が恐ろしいです。今も何をしでかしちゃってるか分かりません』

「こちらも何をしてしまっているか」



既に洗礼名が与えられているかもしれない…屈辱だよなぁ、あれ

とにかくこの子だけでも…!




「何をしているのです、宗茂」

「うぉおっ!!!!?」

『きゃあっ!!?』

「ん…誰か一緒なのですか?」

「そ、そそ宗麟様っ!!!」



背後からの呼び掛けに振り向けば我が君の姿!あー、来ちゃったよ!

咄嗟に少女を背中に隠すが悲鳴が聞こえてしまったらしい。背後に回り込もうとする彼にさせまいと、わしもグルグル



「宗茂!何を隠しているのです、僕にも見せなさい!」

「我が君の好奇心を満たすようなものは何も!」

「それは僕が決めることです!犬ですか?猫ですか?」

「ぐ…!あ!あんな所に可愛らしい猫が!」

「おや、あんな所に裸木となった盆栽が!」

「なにっ!!?え、奥にバレたら命が―…!」

「バカですね宗茂っ」

「!?!?!」



わしが他所を向いた瞬間、バッと宗麟様が背後に回り込む!まずい、彼女が見つかった!

ああ…わしは無力な少女さえも守りきれな―…




「…何もいないじゃありませんか」

「…………は?」

「期待だけさせておいて、僕の道を塞いでいただけとはどういうことです!」

「へ?え?あれ?」




わしの側に居たはずの彼女は、見渡しても何処にも居なかった









『小太郎くん!松永さん!何処に居たんですか探しましたよっ!?』

「いや、すまないねホトトギス。立ち寄るだけだったつもりが長居してしまったんだ」

『…何処かに迷惑かけてませんよね?』

「もちろんだよ、面白い陶器が飾られた部屋があってね…私らしくもなく心が躍ってしまった」

『へぇ…』

「まぁ、半刻もせず飽きてしまったので粉々にしてきたよ」

『ガッツリ迷惑っ!!ちょ、え、他所の陶器を粉砕っ!?』

「ああ、多少は気分が晴れた。卿もだろう風魔?」

「…………(笑)」

『小太郎くんまでっ!?ダメでしょ松永さんの真似しちゃっ!!』

「…………(泣)」

『え、あ、いや、そこまで強く言ったわけじゃないけれど…』

「………(笑)、(笑)」

「はは、君らは幾分か飽きにくいようだ」

『嬉しくないですっ!!』






20130801.
ザビー教と言うかギャロップ夢

イメージは花咲く森の道〜ギャロップに出会った^^





mae tugi

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