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『ぅ……ん…』




真っ暗な世界に居た

何もない世界に。光は無くて誰も見えない独りぼっち…でも怖くない



『きっと…』





手を伸ばせば誰かに届くから








『…………ん?』

「…お、気がついたぞ」

「お嬢ちゃん、大丈夫かい?こんなとこに迷いこんじまって」

『・・・・・』





…………あれ?




目を開いた私はどこも痛くない。薄暗いこの場所は知らないけど、周りにはたくさんの人が居た


…逞しいオジサンだらけ




『……は?』

「おい、この娘さん頭を打ったんじゃねぇか?」

「水飲むか?」

「いやお前、あんな水飲ましたら腹こわしちまうぞ」

『・・・・・』




待て待て落ち着け私。まずは冷静に自分の置かれている状況から考えよう



私は…平成に生まれ、生きていた女子大生

大好きな兄の死から全ては始まり、私の元へ落ちてきた戦国武将と暮らしていた。そして別れの時…


私はあの人の手を、掴んだのだ




『そうなんです!私はあのチャラ男さんの手を掴んだのに!』

「ちゃ、…なんだって?」

『あの、ここは何処ですか?見たところ…洞窟みたいなかんじなんですけど…!』



いくら見渡しても見知った顔はいない。一緒に時を越えたはずの彼らがいないんだ

そもそも、ここは戦国時代なのだろうか?私だけ別に飛ばされてしまった?

また私は独りに―…





「おいおい、何の騒ぎだ?」

『え……』

「ああ、実は妙な格好した迷子の娘さんが…」

「迷子?まさか刑部の寄越した使いじゃないだろうなぁ」

『ぁ……、…!』



ズシン、一歩が重い

確かに近づいてくる声を私は知っている

急に立ち上がった私を周りの人は驚いて見つめたけど、そう、私はこの人を知っている…!


そう思った瞬間には、彼に向かって走っていた







『黒田さぁぁあぁぁんっ!!!』

「うぉおっ!!?なんだ、て、お前、雪子かっ!!?」

『うぇ、ぅ、黒田さ、よかった、…!』

「なんだ、官兵衛さんの知り合いか」

「本物か?本物の雪子か?どこぞの忍が小生を化かしているんじゃないのか?」

『本物の雪子ですっ!!あっちですごした数日を忘れたんですかっ!!?』

「忘れるわけないだろうっ!!」



抱きついていた私を降ろし、落ち着かせるように肩に手を置く黒田さん

大きい手…安心できるそれに、やっぱりジワジワと目に涙が溜まっていく



「お前さんも…こっちに来ちまったのか?」

『じゃあ、ここはやっぱり…』

「雪子の住んでる世じゃなく、小生の生きる世だ」

『っ―……そ、か…』



俯いた私、その様子を見た黒田さんが慌て出した

大学に現れた時と同じ手枷…周りの人たちも騒ぎ始める。物珍しい私を覗き込む彼らを、黒田さんが追い払った




「…小生がここに戻って、もう一つ季節が過ぎてる」

『季節が…じゃあ、みんなも…』

「まさか雪子も来ちまったなんて知らなかった…なんで来たんだ、こんな所」

『…………』

「お前さんの世と違って、いつ死ぬか解らん。危険な場所なんだぞ」

『だって…私が決めたことなんです』

「は?」





そう、私は結末を知ってる。だからこそ、みんなと―…





『離れたくなかった』

「……は?」

『一緒に居たかったんですっ!!』

「っ、な、なに、…!」




一瞬の静けさの後、何故か周りから拍手と口笛の嵐が巻き起こった






20130414.
落下したのは穴蔵でした

官兵衛一行の勘違いが始まります←





mae tugi

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