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「雪子は戦を止めに来たのか?」

『直接攻めないでよ前田…うーん、少し違うかな』



隣に座る前田からの質問に、私は首を傾げて曖昧に答えた

皆を失う未来にしたくはない…けど戦を止めたいか、と言われたらそうではないんだ




『越後に身を隠してるのは戦のど真ん中に、その瞬間に乱入したいからなんだけどね』

「それ、危ないだろ?雪子は戦えないんだ。もしかしたら…」

『あはは、そこは何とかなるって妙な自信があったりなかったり』

「へ?」

『私は…一緒に暮らしてた皆しか知らないから』




私の知る彼らは喧嘩ばかりしてた。それでも知らない未来で協力して、互いを心配して、支えあって

そんな彼らが命を奪い合うなんて未だに想像ができない


そして―…




『何か別に方法があると思うんだよね。皆のわだかまりを解く方法』

「…戦以外でってことか?そんなの…簡単にできることじゃないよ」

『分かってる。だからね、それが見つかるまでは戦が続いて欲しいって思ってる部分もあるの』

「っ―…」

『…あは、私が天女やお姫様ってなら…こんな酷い考え、持つはずないよね』




…あのお坊さんにも指摘された。乱世が続くことを望んでいる、と

だって戦の終わりは誰かが居なくなってしまうことを意味するから。私はそれが何よりも恐ろしい




『家康くんなら…私の知る歴史と同じ、平和な世って言われる時代を創れると思う』

「家康、か。じゃあ雪子は東軍を勝たせたいんだね」

『うん。三成はそれを望まないし拒むけど、“理想”はそれ』

「ふぅん…つまり話し合いで解決して、後の日の本は家康が治めるってことかい?そりゃ西の連中は納得しないよ」

『はぁぁ…だよね、分かってるよ。自分でも無茶苦茶だって』

「…でも、その無茶苦茶って雪子にしかできないと思う」

『………え?』



ぐしゃぐしゃと頭を掻いていた私に、前田から贈られた意味の分からない言葉

チラリと横目で伺えば何故か懐かしいニッとした笑顔がある



「俺だって戦じゃない方法で収まるならそれがいいよ。雪子の理想は間違ってなんかない」

『…うん』

「みんな分かっちゃいるけど無理なんだ。何だかんだ言って俺たち、戦での解決方法しか知らないからさ」

『っ―……』

「雪子は戦を知らない。でも逆に言うと、今の日の本で戦以外の解決方法を知ってるのは雪子だけなんだ!」

『私だけ…?』

「そう!戦のない平和な天下…大事な人と幸せに暮らせる世を知ってる雪子だから。きっと方法も見つかるよ!」



これだけは、自信をもって言えるよ

そう言って私の肩を力強く叩く前田。まるで背中を押しているようなそれに、私も不思議な自信が湧いてくる



『あは、妙に前向きなこと言うね前田』

「はぁっ!?俺はいつだって前向きだよ!雪子こそ人が心配するようなことばっかりして…!」

『はいはい、ごめんね』




いつも…か


やっぱり私たちは、初めて会った気がしなかった




「…………」

『…さて、明日は作戦会議でもしようかな!なんせ凶王よりも恐ろしい元就さんが居るからね!自信だけじゃ勝てないよ』

「…雪子は、さ」

『ん?』

「秀吉が…何をしたか知ってるのか?」

『え?』

「松永久秀が、どういう奴か知ってるのか?知った上で…」

『何となくだけど知ってるよ』

「…………」




部屋に戻ろうとした私を引き止めた彼。視線をそらして問うてきたのは、きっと出会った頃から引っ掛かっていたこと

私は彼らをよく知らない。それでも夢の中で、この時代で、短いながら共に過ごした時間がある




『知ってるけど私が実際に見たわけじゃないし…秀吉さんのこともぼんやりとだけ』

「それでも、アイツらは…!」

『うん、けど私は優しい秀吉さんと世話焼きな松永さんも知ってる』

「っ―…!」

『そんな彼らと過ごしたんだもん…何があっても、嫌いになんかなりきれないと思う』




じゃあ、おやすみなさい…









「…秀吉さん、か。雪子はやっぱり秀吉の妹じゃないのか」



一人きりになった縁側でぼんやり空を見上げる

そりゃそうだ、秀吉の妹ってなら俺が知らないはずがない。何処と無く感じた懐かしさにもしやと思ったけど




「…嫌いになんかなりきれない、て。簡単に言ってくれるよなぁ、案外難しいよそれ」




それも雪子の理想なだけかもしれない

単にアイツを兄に重ねているだけかもしれない…それでも、





「あの子は本当に、お前を信じてるのかもな」





俺はどうだろう、







20130708.
前田の山場でした(早っ

次は再会の兆しです^^





mae tugi

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