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「タケちゃんっ!!」

「…………」

「っ…雪子は…居ない、のか?」




開かれたままな門をくぐれば、玄関に立つタケちゃんの背中が見えた

静かな家、ついたままの電気、呼び出されてすぐ駆けつけた俺の息は絶え絶えだった




「いくら電話しても出ないんだ…大学にも来ていないんだろう?」

「あ、ああ」

「ドアの鍵も開きっぱなしだった…財布は置いてある。だがどこにも雪子が居ない」

「…………」



グッと携帯を持った手に力が入る。俺はそれをぼんやり見つめながら思った



…雪子は、ついて行くことを選んだんだ



「やっぱり…行っちゃったのか」

「っ―…君は雪子が何処に行ったか知っているのかいっ!?」

「へっ!?あ、えっと、あははー、まぁね」

「まさか…三成くんと一緒かっ!?」

「それは知らないけど…心配しなくても雪子なら大丈夫だよ、らしくないよタケちゃん」

「君が落ち着きすぎなんだっ!!」



真っ青な顔で声を荒げるタケちゃん…ふと、一年前のことを思い出した

吉郎さんが事故にあった、その連絡を受けた時も彼はこれくらい取り乱していた




「雪子がここを出ることを決めたんだ。見送ってやるべきだと俺は思うよ…危ないって気がしてもさ」

「君は忘れたのかっ!?僕はっ、彼に誓ったんだ…あの子は僕が守ってやると」

「えぇー、それは昔から俺の役目だったんだけどなぁ」

「っ―……!」

「言っとくけど、雪子と居た時間はタケちゃんより長いからね」




いつからかは分からないけど、別々の小学校なのに俺は毎日雪子を迎えに行っていた

中学校からはずっと一緒で…俺はこれからもそのつもりだし、きっとそうあり続けると思う



俺は全部を知った

雪子の周りに居たのはこっちに飛ばされた戦国武将。過ごした毎日の中で雪子の大事な人たちになった

そして迷った別れの時




「あの雪子が決断できたんだよ。戻ってくるまで俺は待ちたい」



俺の言葉に信じられない、と言いた気なタケちゃん

アンタの気持ちも分かるよ。側に居なきゃ守れるものも守れない、だけど―…




「理由は解らない…でも自信があるんだ。雪子なら大丈夫、そんで…俺が何も起こさせやしないって」

「は…?」

「俺が側に居られなくても、雪子に何も起こさせないよ」



離れるつもりはないんだって、そんな自信と同時に妙な確信がある


ここにはもう居ない雪子を思って笑ったら、一瞬だけ視界が白に染まった気がした







20130515.
現代の幼なじみの会話

越後に突入する前に書いときたかった番外編です←





mae tugi

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