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『…木がある』



庭に立って触れたもの。地面に目を向ければ石が転がっている

耳をすませば人の話し声が、遠くを見れば動く影が、息を殺せば己の気配が消える感覚がする



『少しずつ戻ってる…これなら…』




光を取り戻すことで、同時に忍のそれも戻ってきている

未だ慌ただしい屋敷の人たち。そんな彼らは日頃、戦いなんか縁遠い人たち



『…今は、私が…』



せめて侵入者が何者なのか。上田に攻めいって来るのか。それを確かめたくて

私は強く地面を蹴った










『…っ………』



屋敷から離れた場所に着いた瞬間、昔に聞きなれた足音がして身を隠す

戦に慣れた…男たちの足音。建物はなく木々に囲まれた国境で、彼らは何をしているのか




「…しかし魔王だなんておっかないもの、わざわざ喧嘩売りに行くか?」

「なんだビビってんのか?」

「な、んなわけねぇだろ!なめてんのかっ!!?」

「静かにしろテメェら!」

『っ―…!』

「す、すんません!」

「喧嘩じゃねぇ、視察だ。粋がる前に状況を見ろ」



騒ぐ彼らを叱る低くて厳しい声…意外と近くで聞こえたそれに思わず身構える

気配だけで分かった、この人は、この軍はただ者じゃない




「魔王の動きは分かった。今は急いで戻り、領地の備えをすべきだ」

「け、けど…見ちまったし…」

「あ?」

「魔王を見た瞬間、あの人の目が変わったの見ちまったんすよ!興奮、というか何というか…」

「ありゃ今にも喧嘩を売りそうでヒヤヒヤしましたよ、俺」

「確かに…もしも今、“政宗様”の前に興味をひく相手が来ちまったら一戦じゃすまねぇかもな」

『っ!!!?』




政宗、

もしやと浮かんだその名に気をとられ、思わず漏れてしまった気配

それに気づかぬ男ではなく―…



「誰だっ!!?」

『っ、あ―…!』



聞こえた怒鳴り声と共に近づいてくる気配。目の前に現れた影に胸ぐらを掴まれ背後の木に押し付けられた

グッと痛む背中…ぼんやりと目に移る男が私を見下ろしているのが解る



「女…?」

『ぃ、―っ…!』






土のにおいの男、




 



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