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空では太陽が輝いていた
重なった影はその光を背に浴び降ってくる。俺はそれを身体で受け止めた
『幸村さんっ!!!』
「っ……兎……兎、か?」
『もちろん!私は兎よ幸村さん、貴方の兎っ…間違いないわっ』
「〜〜っ、兎っ!!!」
『幸村さんっ!!!』
ぐっと抱き締めた腕の中、震える俺に対し彼女はくつくつと笑っている
柔らかい髪も、温かい体も、名を呼ぶ声も全てが全て、兎で間違いない。それに感極まり泣き出す俺を困った顔で彼女は見つめた
「え……」
『泣き虫ね、幸村さん。泣かないで、笑って。私を見つめて笑って』
「兎っ…まさか…!」
『幸村さん…』
貴方は太陽みたいな人だったのね
そう呟いた兎は、そっと俺の頬をその両手で包み込む。目を合わせ再び微笑む。その目には…情けなく泣く、真田幸村が映っていた
『…はじめまして、幸村さん』
「〜〜っ!!!」
『迎えに来てくれてありがとう…ごめんなさい…ごめんなさいっ』
「いや、迎えに来るのが遅くなりすまぬっ!!そして…ありがとう、ようやく兎の目に映れた」
『幸村さん…』
「帰るぞ、武田へ」
『はいっ!』
俺の上に乗ったままだった彼女を降ろし、先ほどから黙ってこちらを見つめる片倉殿へと視線を移した
彼は苦笑し、何を意味するのか両手を上げる。そして悪かったな、と一言
「言い訳はしねぇ…悪かった。お前の大事なもんを奪っちまったのは確かだ」
「片倉殿、何故ここに兎が…い、いや!もうよい、もう…」
「それならキッチリ、政宗様本人が説明してるはずだ。テメェのとこの忍にな」
「佐助に?…ま、まままさか!門で某らを迎えた御仁が伊達政宗殿っ!!?」
『伊達さま本人がお話しするって言うから止めなかったけど…真実を佐助さんに話して平気かしら?』
「それで忍の逆鱗に触れたなら、自業自得ってやつだ」
『あら、酷い右目ね片倉さまっ』
「ははっ」
「……………」
肩を震わせ笑う兎と、柔らかく笑う片倉殿。その2人を見た瞬間、ああ、と全てを理解した
そして次に俺は片倉殿へ、深く深く頭を下げる
「片倉殿…感謝致す!」
「……は?」
「兎が奥州にいること、戦場にいたこと、その経緯は分からぬ。分からぬが、兎に光を取り戻したのは貴殿で間違いない」
「いや…俺は…」
「感謝致すっ!!!」
「……………」
『片倉さま…ありがとうっ』
「っ……礼はいらねぇ」
だが、と彼は言葉を続ける
「もし、兎がまたテメェの側から離れたなら…次は俺が迎えに行く番だ」
だから、その日まではサヨナラだ
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