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『…………』




ボソリと呟いた、

月の夜の唄







「何の歌だそりゃ、」

『あら…盗み聞きなの片倉さま』

「気づいてなかったか?てっきり俺に聴かせてるもんだと思ったが」

『ふふっ、ご冗談』



クスッと小さく笑いながら座る兎だが、さっきまで確かにその口は歌を紡いでいた

聞き慣れないが綺麗な声だ…いや、いい歌だ。初めに思いついた感想を、頭を振って追い払う



『…昔、聴いた歌よ』

「忍の歌か、呪いが込められていそうで恐ろしいな」

『ふふふ…呪いは強ち間違いではないかも。古い友人に教わったの』

「友?」

『あら、私に友がいたらおかしい?』

「そうは言ってねぇだろうが。いちいち他人の言葉をひねくれて解釈すんな」

『貴方がそれを言うの?ふふっ、昔の話よ。ずっと昔のお話』

「…………」



今日も今日とてはぐらかす、か

未だに俺が信用ならないのかそれとも…自分の昔話に、触れられたくないだけか




「…………」

『幸村さんは唄なんか趣味じゃなさそうだったし…でもそうよね、昼間から歌うようなものでもないわ』

「兎、」

『はい?』

「…いや、何でもねぇ。もう一度、聴かせてみせてくれ」

『え……歌、を…?』

「ああ…今度は俺にな」

『…………』




一瞬だけ戸惑った兎だが、そっと目を伏せ…唇をうっすらと開いた

そして躊躇しながらもさっきと同じ歌を歌う。それを俺は黙って聴いていた、だが…




『っ……、……』

「どうした?」

『…いえ…やっぱりダメね、片倉さまには歌えない』

「…………」

『どうしてかしら…どこか、似ているのかもね』

「…………そうか」




俺を誰に重ねた、


その言葉を口にしていたならば…俺は思わず、口調を荒げていただろう



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