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魔石となったラムウを手に、我々はティナを助けるために進んでいく。部屋の入り口に向かうとナルシェにいたカイエンとガウが来ていた。

今までの事を2人にも分かるように説明しながら階段を降りていく。
捕らえた幻獣から魔導を取り出し、それを使ってセリスのような人口魔導士を生み出す施設が魔導研究所。そしてそれは首都ベクタにある。
船も出ていないとなればどうすべきかと考え込んでいると、ロックがジドールで方法を探してみようと話す。

皆で町に戻った後、マッシュ達に聞き込みを頼み、自分はセリスとロックを連れて街で一番大きい屋敷へと赴いた。

建物の中に入り程なくすると、我々の前から身なりの良い男性が歩いてくる。
するといきなりセリスを見ながら“マリア”という名を口にした。

「すまん、人違いだった。その女性が私の劇団の女優にあまりにも似ていたので…」

どうやら相手はセリスをマリアと見間違ったようだ。
急いた様子で困った困ったとしきりに口にしながら外へと出て行ってしまった。
その背中を見つめていると男性が何かを落とした事に気付く。落ちていた封筒を拾い上げると、この家のマスターが経緯を教えてくれた。

「オペラ座で芝居をやっている劇団長なんですよ。みんなはダンチョーって呼んでますがね」

先ほどの男性はあの有名なオペラ座の劇団長らしい。
だが今は困ったことが起こり酒に酔いつぶれているそうだ。

そのキッカケというのが先ほど拾った手紙のせいだとか。

『おたくのマリア。ヨメさんにするから、さらいに行くぜ。

               さすらいのギャンブラー』

端的な内容の後に書かれている名前。一体誰なのかとロックが聞けば正義や悪などそんなものとは関係の無い世界に生き、ギャンブル場の入った飛空艇ブラックジャック号で空を翔ける男。

「世界に一台しかない飛空艇を持っているセッツァーさ」

セリスがすかさず飛空艇に反応し、これがあれば空から帝国に乗り込めると話す。
確かに今のところ一番安全で確実な方法はこれしかないだろう。さっそくこの話を全員に知らせるため、夕食を兼ねて話し合いをした。
ナルシェの方も守りを固めなければならない事もあり、二手に分かれて事を進める流れになった。

今までの経緯を知っているメンバーでこのまま帝国に向かうのが妥当だとカイエンが話す。ユカは少し迷いを見せたが、自分の為にもとマッシュと共に私達と行動を共にすることになった。

次の朝、カイエンとガウはナルシェへ。
我々はチョコボに跨りオペラ座へと向かった。

程なくして到着したオペラ座。
風格ある建造物にユカがまた嬉しそうな顔をする。こんな所に本当に入れるのか心配している彼女を連れて建物の中に入れば劇団長の姿があった。

「あ!この間の」

マリアをさらいにセッツァーが来ることを口にすれば困った困ったと狼狽する劇団長。
派手好きのセッツァーは劇が盛り上がった時に現れるだろうと溜息を吐く。

相手が出てきたその時に掴まえようと話すロックだったが、劇団長はクビにされることを恐れてやめてくれと頼んでいた。

「なら、お手上げじゃないの!」

セリスが相手を一喝するものの、悩み続ける劇団長。
芝居は成功させたいが、マリアはさらわれたくない。
そんな悩みを解決したのはロックの提案だった。

「さらわせればいい」

ロックらしい斬新な案に一同が呆然とする。つまりセリスをマリアの代わりに誘拐させることにより、セッツァーの後をつけるという事のようだ。
この案に1人反対していたセリスだったが、逃げ出すように部屋に閉じこもる。

ロックがそっと近寄りドアの向こうの様子を確認すると笑ってみせる。

「結構やる気だぜ。セリスは」

こうして始まった、セリスによる大女優作戦。
自分達にはやれることもなかったので、準備が出来るまで邪魔にならないよう観覧席に移動しようと声をかけた。公演まではまだまだ時間があるので、ゆっくりとセリスの仕上がりを待つこととなった。

二階からの景色をじっと見ていたユカが、初めてのオペラ鑑賞に緊張していると話すので可愛らしい悩みを解決してあげようと、演目の内容などを教えてあげた。

舞台の上から聞こえて来た演奏に聞き馴染みがあったこともあり、彼女をダンスに誘ってみることにする。

「踊ったことはあるかい?」
「い、いいえ…一回も」
「それはいい。踊ると結構楽しいものだよ」

にこりと微笑みながら相手の手を取り、背中に腕を添える。
足の動きを教えつつ、ゆっくりエスコートすれば彼女は緊張しながらもそれなりに踊れていた。飲み込みの早さに教えるのが楽しくなっていると、いきなりマッシュが声をかけてくる。

「おーーい、アニキ。ロックが話あるってよ」

折角の素敵な時間を邪魔され肩を竦めるしかない。
ユカに別れを告げて渋々ロックと話しをする事にしたのだった。


それから暫くして開演のブザーが鳴り響き、物語が始まっていく。
美しい演奏と俳優達の演技は素晴らしく、1人の観客として舞台を楽しんでいた。
すると隣に座っていたロックがソワソワした様子で立ち上がり、セリスの様子を見てくると足早に楽屋へ向かっていった。

心配だから見に行ったのか、それとも気になったからなのか。ともあれ、良い関係性を築けている2人がこれからも共にいられるように祈っておくことにしよう。

舞台の上では音楽が変わり背景が城の屋上へと変化する。
セリスが女優と見紛うほどの演技振りを発揮し観客を圧倒してみせた。素晴らしい出来映えに拍手を送っていると、ロックが血相を変えて戻ってきた。

「オルトロスが邪魔しに来るぞ!!」

舞台の上では、クライマックスに近づいて盛り上がっている最中だ。セリスを守り尚且つ舞台も成功させなければセッツァーは現れないかもしれない。
天井裏の鉄筋の上で蠢く影を発見し、オルトロス討伐へ向かうことになった。
扉のスイッチをユカに任せ、自分達は細い鉄筋の上を進んでいく。
襲い掛かってくるモンスターを跳ね除け、錘を落とそうとするオルトロスと対峙するのだが追い込んだ相手が突如としてこっちに向かって突進してきたのだ。
不安定な足場では留まる事は出来ず、全員揃って舞台の上へと落下していった。

打ち付けた痛みを抱えながら体を起こすと、男性俳優は2人とも気絶している最悪の事態だ。どうにかしなければと思った矢先、一番初めに動いたのはロックだった。

「セリスをめとるのはドラクゥでもラルスでもない!!世界一の冒険家!このロック様だァア〜!」

最高としか言いようの無い台詞を大舞台で言ってのけるロックの勇姿に思わず笑いが込み上げる。こうなれば流れに乗ってやるしかあるまいと、武器を手にオルトロスとの戦闘を開始した。

気持ちを煽るような音楽を背に受けながら攻撃を繰り返し続ける。
レテ川での恨みがあるのかマッシュはいつも以上に力が入っているようだ。ロックの素早い攻撃にマッシュの強力な技、自分も負けじと機械を駆使して戦った末に勝利を得ることが出来た。

オルトロスを撃退したロックが高らかに笑うと、突然どこからともなく大きな声が響いてきた。

「素晴らしいショーだったぜ!」

暗転した舞台の上に姿を現したのはさすらいのギャンブラーセッツァーだった。予告どおりマリアをさらっていくセッツァーを見届けた我々は、計画通り飛空艇へと潜入したのだった。


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bkm

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