EP.35
連なる列車は何処まで続くのか。

似たような構造の車内を前へ前へと進んでいくと、自分の背後に憑いているお化けと同じような存在が沢山徘徊していた。

「・・・・・・・・・・」

しかもその相手と皆が戦うものだから自分の背中が怖くなる。

「大丈夫だよね?襲ってこないよね??」

後ろを振り返りながら聞いてみると頷くようなジェスチャーをしてくれた。
それを信じて次の車両へと入ったのだが行き止まりだった。
戻って一度外に出ようとしたけれど、入り口で突然お化けが現れ、恐ろしい声を響かせてきたのだ。

“…逃、が、さ、ん………”

相手を倒して外に出たはいいものの、その悪夢は何故か続いていた。


“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

段々と近づいてくる声。
聞こえてきた方に向かっていくと恐ろしい数のお化けが姿を現し始める。


“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

“…逃、が、さ、ん………”

木霊す声に恐怖を感じながら皆で戻ろうとするけど、反対からも幽霊が現れ逃げ場がなくなる。だったら車内に退避しようとしたけど扉は開かず、じわじわと挟み込まれていく。

車両全てを多い尽くす程の数に膨れ上がった幽霊。逃げ場を探して辺りを見回すと屋根へと登るハシゴを見つけ、全員がそれを駆け上がって行った。
けれど、登ったハシゴを幽霊も同じようにして登ってくるではないか。

“逃がすな………”
“逃がすな………”
“逃がすな………”
“逃がすな………”

恐々とした声を響かせ迫りくる敵。逃げようと前に進むけど列車は一両ごとに区切られているせいで逃げ場が無かった。

「行き止まりでござる!」
「よし!!」

何やら勢い良くマッシュが頷く。
今までの経験上、何となく嫌な予感がした。

「何か良い考えでも?」
「おうよ!今こそ、修行の成果を見せるとき!来い、ユカ!カイエン!シャドウ!」

列車の後方ギリギリまで下がったかと思ったら、声を張り上げ走り出す構えをしたではないか。

「・・・や、っぱり…」

どうやっても常人には無謀としか思えない。
だって自分は本当に何のとりえもない一般市民だし、皆と違って優れてないし飛び抜けた存在でもない。

溜息をつきながら途方に暮れていた自分を、またもやマッシュが大きな声で呼び寄せている。けど、自分と彼とでは走る速さが違うから追いつける訳がないと言おうとしてたら、尻込みしている自分の体がいきなり宙に浮いた。

「………手間の掛かる奴だ」
「――…!?シャ…シャドウさん!?」
「行くぞ。もう真後ろにいる」

私を抱えたまま風を切るような速さで走り出したシャドウさん。
車両の前方まで行くと、まるで鳥のように空を舞い車両の間を軽々と飛んでしまった。
次の車両の間も難なく飛び移り、あっという間に幽霊から逃げることに成功していた。

「ありがとうございます、シャドウさん」
「構わん…」

そっと降ろしてくれると直ぐに距離をとる彼。
まさかの優しさに呆然としていると、少し遅れてマッシュとカイエンさんが自分のいる車両に喋りながら飛び移ってくる。

「おい!!早すぎるだろ!!それに俺がせっかく」
「競争ではござらんよ、マッシュ殿」

やけに突っかかってくる物言いのマッシュが着地した瞬間、老朽化した屋根が壊れ皆揃って落下していく。あまりの事に目を瞑り衝撃に備えたが、まったく痛みが無い。

「あ、あれ…?」

片目を開けて下を見てみると、ものの見事にお化けを下敷きにしていた。

「ご、ごめんッ!!!!大丈夫!?」

すぐに避けて声を掛けたけれど、お化けは小さく手を振ると透明になって消えていってしまった。

「う、うそ……し、死んじゃった。どうしよう!」

動揺している私にカイエンさんが冷静に言う。

「お化けは元々死んではござらぬか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

何とも言い難い気持ちだったが、確かに正論かもしれない。
追いかけてくる幽霊を列車ごと切り離した後に、助けてくれたお礼を込めて手を合わせる。それから次の車両に向かったのだが、普通にさっきと同じお化けがいた。


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