▼ だって、好きなんです(世良夢)
Q.世良選手の好みのタイプは?
A.う〜ん、好みっスか? 明るくて、優しい娘がいいっス!それと…
゛背が低い娘がいいかなっ″
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クラブハウスの廊下を、パタパタ走りながらあっちにこっちに仕事をこなす。
ここのクラブハウスのスタッフは、働く気があるのか?っと聞きたくなる程、電話が鳴っても出やしないし、残業やらずにさっさと帰るし…正直いって有里さんと私だけでしょっ、動き回ってるのは。
「…ふぅ…疲れた…」
「お疲れ様!ゆいちゃん」
やっと一息ついてイスに腰掛ければ、有里さんがコーヒー入ったカップを机に置いてくれた。
「あ、ありがとうございます!…おいしっ」
少し熱いコーヒーをコクッと飲めば、ホッとする。
「…そういえば…今日、スニーカーなんだね?」
有里さんが私の足元を見て言った言葉で、一瞬コーヒーこぼしそうになった。
「えっと…はい…」
(危ない、危ない…)
「たしか…いつもヒール履いてたよね…?」
「そ、そうですね…まぁ、この方が動くのには楽かなぁ〜って…ハハッ」
苦笑いで返せば「ふ〜ん」っと気にもしない風に返事をされてホッとした。突っ込まれても困るし…
「あのっ!ちょっと出てきます」
私はその場を離れるべく慌てて廊下に出た。
ふぅっと息を吐いて、足元のスニーカーを見つめた。
(…だって、世良さんが…背の低い娘がいいなんて言うから…)
昨日更新されたETUのオフィシャルサイトに、世良さんのインタビューが載せてあって…
好みのタイプに背の低い娘って出ていて、私はかなり衝撃を受けてしまった。
世良さんは、そんなに身長高い訳じゃなくて、公式では166cmだったかな…?私は159cmだけど、ヒール履くと同じ位の目線になってしまう。
身長なんて、私は全然気にしないけど…世良さんは、気にするんだろうな。
だから…だから少しでも低くなれたら…そんな風に思ってしまう程には、世良恭平が好きなんだ―。
別に、私が低く見える様になったからって、世良さんの彼女になれる訳でもないけれど…それでも…だって。
ガヤガヤと出入口に声が聞こえてきて、練習が終わったんだとわかる。
ロッカールームの側に向かうと、目の前には世良さん。
「お、お疲れ様です」
少し俯き気味に声をかければ、「あっ!ゆいちゃん、お疲れ〜!」っと明るい声が返ってくる。この明るくて、ニカッと笑う世良さんの表情が大好きなんだよなぁ〜。
私も頑張って、笑って彼を見れば彼がキョトンとして、私を見つめる。
あまりにもジーッと見つめられて、私の頬は熱を帯びてくる。
(は、恥ずかしい…)
「あ、あの…「あぁ、そっかぁ〜!」」
世良さんが急に大きい声を出して、左の掌に右拳をポンっとさせた。
今度は私の方が首を傾げて見せると、世良さんが私の足元を「それ、それ」っと指さした。
指さした先には…スニーカー。
「なんかさぁ〜…ゆいちゃんとの目線がいつもと違うなぁ〜って思ってさっ」
言い終わった途端、私の真ん前まで近づいてきて、「ほらっ!」っと満面の笑顔でニカッと笑った。
いつもより、少し目線を上げた私と、少し目線を下げた世良さんの瞳が絡む。瞳をキラキラさせた世良さんから、目を逸らす事が出来ずに私は固まってしまった。
好きなの…
貴方が好きなんです。
ヒールからスニーカーに変えたからって、そんなに背が低く変わる訳でもないけど。
少しでも、あなたの好みに近づきたいの―。
「ヒール履いてる姿も、デキる女みたいでカッコイイけど、スニーカーで走り回ってる方がゆいちゃんらしくていんじゃない!危なくないし…」
そう言って、ちょっとテレ臭そうに笑うあなたが、また大好きになりました。
《だって、好きなんです》
(もう少ししたら、好きって言うから…)
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