だって、好きなんです(世良夢)


Q.世良選手の好みのタイプは?

A.う〜ん、好みっスか? 明るくて、優しい娘がいいっス!それと…





゛背が低い娘がいいかなっ″












********

クラブハウスの廊下を、パタパタ走りながらあっちにこっちに仕事をこなす。

ここのクラブハウスのスタッフは、働く気があるのか?っと聞きたくなる程、電話が鳴っても出やしないし、残業やらずにさっさと帰るし…正直いって有里さんと私だけでしょっ、動き回ってるのは。


「…ふぅ…疲れた…」

「お疲れ様!ゆいちゃん」


やっと一息ついてイスに腰掛ければ、有里さんがコーヒー入ったカップを机に置いてくれた。


「あ、ありがとうございます!…おいしっ」


少し熱いコーヒーをコクッと飲めば、ホッとする。


「…そういえば…今日、スニーカーなんだね?」


有里さんが私の足元を見て言った言葉で、一瞬コーヒーこぼしそうになった。


「えっと…はい…」


(危ない、危ない…)


「たしか…いつもヒール履いてたよね…?」

「そ、そうですね…まぁ、この方が動くのには楽かなぁ〜って…ハハッ」


苦笑いで返せば「ふ〜ん」っと気にもしない風に返事をされてホッとした。突っ込まれても困るし…


「あのっ!ちょっと出てきます」


私はその場を離れるべく慌てて廊下に出た。

ふぅっと息を吐いて、足元のスニーカーを見つめた。

(…だって、世良さんが…背の低い娘がいいなんて言うから…)

昨日更新されたETUのオフィシャルサイトに、世良さんのインタビューが載せてあって…

好みのタイプに背の低い娘って出ていて、私はかなり衝撃を受けてしまった。
世良さんは、そんなに身長高い訳じゃなくて、公式では166cmだったかな…?私は159cmだけど、ヒール履くと同じ位の目線になってしまう。

身長なんて、私は全然気にしないけど…世良さんは、気にするんだろうな。


だから…だから少しでも低くなれたら…そんな風に思ってしまう程には、世良恭平が好きなんだ―。


別に、私が低く見える様になったからって、世良さんの彼女になれる訳でもないけれど…それでも…だって。



ガヤガヤと出入口に声が聞こえてきて、練習が終わったんだとわかる。
ロッカールームの側に向かうと、目の前には世良さん。


「お、お疲れ様です」


少し俯き気味に声をかければ、「あっ!ゆいちゃん、お疲れ〜!」っと明るい声が返ってくる。この明るくて、ニカッと笑う世良さんの表情が大好きなんだよなぁ〜。

私も頑張って、笑って彼を見れば彼がキョトンとして、私を見つめる。

あまりにもジーッと見つめられて、私の頬は熱を帯びてくる。

(は、恥ずかしい…)

「あ、あの…「あぁ、そっかぁ〜!」」


世良さんが急に大きい声を出して、左の掌に右拳をポンっとさせた。
今度は私の方が首を傾げて見せると、世良さんが私の足元を「それ、それ」っと指さした。


指さした先には…スニーカー。


「なんかさぁ〜…ゆいちゃんとの目線がいつもと違うなぁ〜って思ってさっ」


言い終わった途端、私の真ん前まで近づいてきて、「ほらっ!」っと満面の笑顔でニカッと笑った。

いつもより、少し目線を上げた私と、少し目線を下げた世良さんの瞳が絡む。瞳をキラキラさせた世良さんから、目を逸らす事が出来ずに私は固まってしまった。



好きなの…



貴方が好きなんです。



ヒールからスニーカーに変えたからって、そんなに背が低く変わる訳でもないけど。

少しでも、あなたの好みに近づきたいの―。


「ヒール履いてる姿も、デキる女みたいでカッコイイけど、スニーカーで走り回ってる方がゆいちゃんらしくていんじゃない!危なくないし…」


そう言って、ちょっとテレ臭そうに笑うあなたが、また大好きになりました。







《だって、好きなんです》

(もう少ししたら、好きって言うから…)













[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -