ほんの少しの勇気 A (堀田夢)

※名前変換ナシです。





「よければ…君のアドレス教えてくれないかな…?」


目の前の君は、相当驚いたのか顔中真っ赤にして、動揺しながらもコクりと頷いてくれた。

その表情が凄く可愛くて、違う表情も見てみたい。

なんて、思ったんだ―。




携帯をジッと見詰めたまま、かれこれ20分は経っただろうか…メールを打とうとするのだが、中々出来ないでいた。












****************
今日は俺を含めた丹さんガミさん堺さんの4人と、OLの4人の女性で飲み会が開かれた。どうやら丹さんとその中の1人の子が知り合いらしく、まるで合コンのノリに近い感じで飲み会がはじまった。

男女交互に座る形で、俺の隣に座った子は終始ご機嫌で、良く喋る女性だった。4人の中ではモデル並に綺麗でスタイルの良いスレンダー美人と言えばいいだろうか。
とても目をひく女性だ。

サッカーの話や色んな話をして楽しいのは楽しいのだが、どうにも香水の匂いが鼻についてしまい旨いはずの酒も料理も旨く感じなくて、少しげんなりしていた。

そんな時、俺から見て左斜め前でガミさんの向かいに座っていた彼女をふいに見てみれば、ずいぶんと酒のペースが早くないか…ってくらいのペースで飲んでいた。

時折隣の丹さんやガミさんと会話して、ニコニコ笑っていたけどふいに切なげな表情で酒を煽っているその姿が、どうにも気になった。

(…ちょっと飲み過ぎじゃないか…)

よほど俺が彼女を凝視していたのか…視線を感じた彼女が俺の方を見た。
バチッと目が合うと視線が絡まる。っとおもいきり逸らされて、そのまま立ち上がり出て行ってしまった。


「…つっ!?」


ヅキっと心臓が妙に痛くて…隣の女性が何かを言っていたけどあまり耳に入ってはいなかった。


あれからどれくらい経ったのか?

まだ戻って来ない彼女が気になって、俺は立ち上がった。


トイレの前にある鏡を覗き込んで、溜息をついている彼女を見かけ声を掛けようかっと戸惑っていれば、気配に気が付いた彼女が振り返った。


「…具合悪いのか?」


少し俯き加減の彼女の顔色を確認しようと覗き込めば、慌てたように俺の名を呼ぶ顔は真っ赤になっていて、一瞬ふわりと彼女から香る匂いが、少し甘くてそれでいて爽やかで、俺の隣に座っていた女性とは全く違う事にびっくりしておもわず顔を反らしてしまった。


「大丈夫です。気にして頂いてありがとうございます」っと笑顔を向けた彼女にドキリとする。

このまま別れてしまうのは、なんだかイヤだと思ってしまった自分に少しびっくりしながらも、ほんの少し勇気を出して彼女にアドレスを聞いた。




『今日はずいぶん飲んでたみたいだけど大丈夫だった?酒は好きな方なのか?もしよければ、飲みにでも行かないか。2人で…』



書いては消して、書いては消してを繰り返し、ようやく送ったメールに返事が来るまで、ドキドキと落ち着かず…俺は部屋の中をグルグル歩き回っていた。




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