ほんの少しの勇気 @ (堀田夢)

※ヒロイン視点、名前変換ナシです。







綺麗になりたい。


ほんの少し、目がクリッとしたら。

ほんの少し、ぷっくりとしたぷるぷるの唇になったら。

ほんの少し…胸が大きくなって、足がスラッと細くなったら。

ほんの少し、ほんの少しって…今よりもちょっとだけでも綺麗になれたら。


私の事、貴方は見てくれますか…?









友人に連れて行ってもらった、ETUの選手の人達との飲み会で出会った貴方に、人生初の一目惚れなんてものをしてしまった。近くに行きたいのに、どうしても近付く事が出来ない小心者の私は、一目惚れした堀田さんの隣に座って会話している友人を、恨めしそうな顔して見詰めていた…っと思う。

私の友人はとても綺麗な子で、学生の頃からとても人気があった。
堀田さんと2人並んでる姿がとてもお似合いに見えて、私はおもわず視線を自分の手元に戻して目の前のお酒をグッと飲み干した。


「へぇ〜。いい飲みっぷりだなぁ〜」


そう言って私の目の前に座った石神さんがニコニコしながら「もっと飲む?」っと聞いてきたから、コクリと頷いた。

店員を呼んで注文をしてくれる石神さんをボーッと眺めていた。


そういえば…この人も他の堺さんと丹波さんも、めちゃくちゃイケメンだよなぁ…なんて思いながら、酔いが回ってきた頭でサッカー選手ってこんなにいい男ばっかりなのかっと考えていれば、ふいに視線を感じて斜め左側に顔を向けた。


ドクン―。


一瞬、私の心臓が跳ねた。


「…えっ…」


私を見ている堀田さんの視線に、身体中が熱くなる感覚におもわず立ち上がりトイレに向かった。

ドクドクと心臓の鼓動が響いてきて、胸がきゅっと苦しくなるのを手で押さえながらトイレの前まで来ると、ドアノブに手をかけたまま「ハァ〜」っと息を吐く。

堀田さんの視線と、自分の視線が絡まった瞬間、とても恥ずかしくてあの場にいる事が出来なくなってしまい、つい逃げるように出て来てしまった。


「…どうしよう…さっきおもいっきり目逸らしてきちゃったよ…」


いつまでもここにいる訳にもいかないのだけど、まるで茹蛸のような、自分の顔が鏡に映っているのを見て、余計にあの場に戻る事を躊躇してしまっていた。

熱い頬に反比例して、指先はとても冷たくなっていた。その冷たい手を頬に充てていると、足音が聞こえてきて慌てて振り返る。


「…あっ…」


また、心臓がドクンと一つ跳ねる。


「…具合悪いのか?」


目の前に立っている堀田さんが、覗き込むように近付く。


「ほっ!ほほほったさんっ!!ど、どうして…?あの…」


あからさまに動揺している私に、堀田さんは少しビックリしたようで目を見開いて、スッと視線を逸らした。

ちょっとだけ頬を赤らめている堀田さんは、口元に手を充てて「あぁ…そ、その…さっき席を立っていったまま中々戻らないから…酒もだいぶ飲んでたみたいだし…もしかして具合でも悪くなってるんじゃないかと思って…」


言って、チラリと私に視線を向けた。恥ずかしくて、恥ずかしくて仕方がないけど…心配して見に来てくれた事が、とても嬉しくて私は一生懸命に笑顔を向けて「大丈夫です。気にかけて頂いてありがとうございます」っとペコリと頭を下げた。


ほんの少しでも綺麗になりたいけど、今はほんの少しの勇気を持って、彼に近付きたいと思った。





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