▼ はじめまして、恋 C
女ってモンは、ホンマにこっわい生きモンやなっ…
ヒリヒリと痛む頬を押さえながら、地面に落ちた眼鏡を拾う。
(壊れてはなさそうやな…)
ホッと息を付いて、目の前の女子共に目線を向ければ、青ざめた顔して俺を見詰めとる。
「…今吉…くん?だっ、大丈夫…?」
俺の後ろから、か細い声で眉尻を下げながら俺を見上げる彼女に、俺はニッと笑ってみせた。
「…まっ、これくらいはたいした事あらへん。そっちこそ、なんもされてへんか?」
「…う、うん。大丈夫…ありがとう」
安心したように、ふわりと笑う彼女にちょっとドキリとした。
*******
昨日、青峰のせいで隣のクラスの佐藤さんをケガさせてしもて、気になっとったから様子見に隣のクラスに向かおうと廊下に出てみれば、数人の女子に交ざって彼女が教室を出て行くのを目撃した。
明らかに、知り合いって感じやないと直感した。前々から、何度か練習や試合なんかを観に来てた女子達やったからな。
彼女らが人目を避けて校舎裏に向かうのを、気付かれんようにそっと付いていく。影から覗いていれば、どっから声出してんねん!ってくらいのキンキンとした金切り声で、佐藤さんに食ってかかっとった。
「あんた、今吉くんとどういう関係なの?」
「…どういうって…?別にどういう関係でもないけど…」
「何、その態度!昨日今吉くんに抱き抱えられてたじゃない…図々しいんだよ!」
ホンマに女って…怖いな…
つうか…何でお前らがワシらの事でいちいちいちゃもんつけとるんかが、イマイチようわからんのやけど…
そうこうしとる間に、佐藤さん本人はさして文句も言わず、「ケガしたから保健室に運んで貰った」と答えとったけど…女子が数人佐藤さんを取り囲んで、かなり危険な雰囲気をかもしだしとった。
(これは…!な〜んやヤバそうやなぁ…)
そう思っとった矢先。
「バカにするんじゃないわよっ!!」
「つっ!?」
1人、リーダー各の女子が佐藤さん目掛けて手を振り下ろそうとしとった。
バシッ――。
ガシャンっと、地面に眼鏡が落ちた。
(オイオイ…何でワシこんなんに関わっとんねん…)
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