ある日の堺家〜優しいまなざし〜

※堺家長男は名前変換あります。





ガチャリと玄関が開いて「ただいま」っという旦那様の声が聞こえた。

パタパタとその声の主に走り寄る私と2歳の息子の良太。


「お帰りなさい」

「おとしゃん。おかぁり」


最近、まだお父さんと発音出来ない良太が、最初に良則さんに「パパ」と言ったら却下されてしまい、必死におとしゃんと呼ぶ息子に苦笑いの良則さんが可笑しい。


「ハハッ。ただいま、。良太よっと…」


彼の荷物を受け取れば、良太を抱き上げて「いい子にしてたか?」っと笑顔を向ける良則さんに、私の口元も緩む。
良太をお風呂に入れるのは、もっぱら良則さんのお仕事。湯舟の中で今日は何を食べたとか、何のテレビを見ただの、彼にとって息子とのお風呂タイムはコミュニケーションを取る大切な時間らしい。

最後の締めくくりは、ETUのチャントをたどたどしいながらも一生懸命歌う息子に拍手をしてお風呂を出る。


「おとしゃん、おとしゃん。ボク、ちゃんとトマト食べゆよ!」


食事に対して、とても細かい彼の性格上食べず嫌いを1番嫌う。今のところ好き嫌いなく何でも食べてくれる良太だからとりあえず私も一安心。

エヘンと得意げに言う息子の頭を撫でながら「おっ、そうか。偉いぞっ!」っと彼がニカッと笑ってやれば、とても嬉しそうに頬を上気させる良太に、父親の顔をして嬉しそうにする。







良太を寝かしつけてリビングに戻ると、ソファーに座った彼が私を手招きするから隣に腰掛ける。


「…最近は早く寝るようになったな」

「ええ、だいぶ行動範囲も広くなって、昼間は公園でいっぱい遊ぶので疲れちゃうみたいですよ」


にっこり笑えば、良則さんも笑って返してくれる。ふいに彼の手が私の頬に伸びてきて、さわさわと撫でた。そして、頬に触れていた手が耳の後ろから後頭部に回ってグッと引き寄せられる。

目の前の私を見詰める彼の瞳から目が逸らせずに、おもわずぎゅっと目をつぶれば、唇に生温かい感触を感じてふわっと温かい気持ちになる。

唇が離れると、ジッと私を見詰める良則さんの優しい眼差しに、結婚して3年が経っているにも関わらずどうにも気恥ずかしくて仕方がない。


「良則…さん…?」

「…ん?なんだ…」


彼の名前を呼んだのはいいけれど、何かを言おうとした訳でもなくて…言葉を発する事も出来ずに、良則さんの肩口に顔を埋めて首を振った。そんな私の頭上からフッと声が聞こえて、私のこめかみの辺りにちゅっとリップ音と共に、柔らかい感触が伝わってそれが彼の唇だとわかった。


何も言わなくても、ただこうして触れ合っていられるだけで幸せで。


大好きな貴方が、私や良太に向けてくれる優しさや笑顔に、とても嬉しくて。こんな幸せな気持ちを、少しでも貴方に返してあげられてるのかな…?



「私、とても幸せです」



そう言った私に、「俺もだ」っとテレたようにボソリと呟いた貴方は、やっぱり嬉しそうにするから、私も嬉しくて、幸せでたまらないの―。













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